8bit NOW「驚愕の店」


 

近ごろブルーであった私を見て、のぶお隊員は会社が終わるとすぐに 私を捕まえた。

の「隊長!久しぶりに夜の遠征へとしゃれこみませんか?」

隊長「いいねぇ。」

躊躇することもなく夜の探索は速攻で決まった。

の「たまにこういう小活動もホームページに載せたらいいですやん。」

隊長「そうだなぁ。相変わらず初夏京都篇もとまってるし。」

の「冬篇の完結も春だったじゃないですか(笑)」

隊長「まっいいか(笑)」

車はバイパスを通ってひたすら東へ。神戸方面へと向かう。 なぜ東なのか?それは姫路より西は田舎なので10時くらいには閉店になってしまうからだ。(笑)

あてはなかった。ただ知らない道を通ってワキ道を確認しまだ見ぬ店を発見することが本日のテーマであった。

明石のあたりでバイパスを降りて2号線を海沿いに走る。窓を開けると夜の潮風が心地よい。

隊長「おい。のぶお!見てみろ明石大橋の夜のライトアップだ」

のぶお「うおお。奇麗っすねぇ。」

隊長「昔、神戸篇行った時はまだできてなかったなぁ。」

のぶお「あれからもう2年っすか。早いっすねぇ。」

隊長「それにしても俺達も変らねえよなぁ。(笑)」

時間は夜の9時すぎ。嫁さんには残業ということにしてある(笑) 。この日は不作であった。入る道入る道が民家で、なかなか新しいショップを見つけることができなかった。

のぶお「せっかく遠征したのにダメみたいっすね。今夜は。」

隊長「そうだなぁ。そろそろ帰るか…ってちょっと待て〜い

私は自分の目を疑った。店の看板には確かに

”化粧品・販売ビデオ・ ファミコン”

と書かれていた。

しかしどうみてもそれはファミコンショップ には見えなかった。また化粧品店にも見えなかった。(笑)

デジカメを持ってきてなかったので文章で説明をすれば、昔パン屋で、何かの理由でパン屋を廃業し、その店舗の中に無理矢理上記の 商品を詰め込みました。

といったカンジの店構えだ。 店の外にはUFOキャッチャーとガチャガチャが置いてあり、その機械の横には化粧品の看板。中山美穂が笑っていた。

一体ターゲットは誰なのか?!(笑)

我々は恐る恐る店の道路脇に車を停めた。もちろん駐車場などない。

隊長「おいおい。ほんとにファミコンあんのかよ。」

のぶお「なんか怪しい店っすねー。でも隊長よく見つけましたね。」

ファミコンショップに入るのに恐怖感を覚えたのは初めてだ。(笑)

店内は本当にアヤしかった。店長のカラーなのか店内には至る所に

画用紙に手書きのマジックペンで説明がされてある。字は汚かった。

あれはなんというのだろうか。

ガラスの円柱のなかにターンテーブルが あって景品がクルクル回っていて

プレイヤーはバーを引き寄せて景品を 落とすやつ。

その機械の側面には例に漏れず店長の貼紙があった。

狙え!ジーショック!!”(バックにギザギザのイラスト付き)

んなアホな。

なんでGショックが100円で落ちるのだ。

しかし貼紙を もう一度よく見ると、誰も”Gショック”とは書いていない。

”ジーショック”だ。(笑)店長ナイスだ。

店内に人影は見られなかった。あるのは景品落としゲームとUFOキャッチャー だけ。

どこにファミコンがあるのだろうか。辺りを見回すと狭い通路が見えた。

上半分はカーテンで良く見えない。我々は恐る恐る近づいた。

隊長「この奥がゲームかなぁ。」

の「ちょっと入ってみますか。」

と、話つつ私がカーテンの奥へ一歩足を踏み入れた途端

ブーーーーーーッ!!

非常識に大きなブザーの音が店内に響き渡った。その音量は防犯システム。 我々は泥棒状態であった。

隊長「な、なんだ!なんだ!」

店長「いらっしゃい。」

カーテンの奥にはガラスのショーケースがあり奥から店長が出てきた。

スッゲェ怪しい人物だ。

隊長「あのう。姫路からファミコン探しにきたんですが・・・」

店長は私の話を聞こうともせず無言で通路横の壁を指さした。

そこには画用紙にマジックで”VIPコーナー”と書かれてあった。

その字の汚さは絶対”VIP”なんかじゃない。(笑)

隊長「この奥にはファミコンがあるのですか?」

店長「全部壁に書いてあります。これ以上説明すると説明料金500円が必要です。」

皆さんはこの物語を私の創作だと思っているのではないだろうか?

しかし8bit NOWは毎回まぎれもなく真実の話なのだ。

私の頭の中は今の店長の一言でパニックった。

とりあえずこのままカーテン内にいて 店長と話をすれば500円をとられてしまう事だけは

朦朧とした意識の中でも かろうじて理解でき、私はのぶおを引き連れて一旦カーテンの外に出た。

隊長「なんなんだ?この店は?」

の「とりあえず壁の注意書きを読んでみましょうか。」

その時私の頭は完全に豆腐と化していたので記憶だけで注意書きを思い出して書いてみるが、そこには

”VIPルームに入るには入場料500円が必要です。”

”説明を受けるには説明料金500円が別途必要です。”

”当店は皆様の入場料で日々運営しております。”

オッサンなに考えとんねん!

といった内容だ。

隊長「ヤバイなぁ。あの店長。」

の「どうします?帰りますか?」

我々は入口付近で話し合った。もし中に入った時ファミコンがなかったら500円が無駄になってしまうのだ。

しかし私には長年のカンでわかっていた。

「ここには必ずある。」

隊長「しかし正気か?一体どこの店が入って見るだけで金とるんだ?」

の「こんな商売、国が許可しているんですかね。」

隊長「しかしさっきの見事な話っぷり。はるばる姫路から来ても何の反応もナシだ。(笑)」

の「ここはあの人のルールでしか生きられないんですね(笑)。」

確かにそうであった。店内は日常での常識が全く通用しない空間であった。

脈絡のない商品構成。意味ありげなVIPルーム。店長の自己世界を包み込む手書きの貼紙。

まるで一般市民が山奥の禅寺にいきなり飛び込んだようなものだ。完全なる異世界だ。

いくら話こんでもラチが開かない。私はその場にかがみこんでみる。

カーテンの奥の店長は 無言でショーウインドーに立ったままだ(恐)

の「か、帰りましょう。隊長。ねっ。」

私はなかば強引にのぶお隊員に手を引かれ車に連れ込まれてしまった。

の「ないですって。きっとこんな店。奥には化粧品しかないっすよ。」

車はどんどん怪しい店から離れていく。しかし私はどうしても後ろ髪をひかれる思いを断ち切れなかった。

もしかしたら私はアリ地獄の淵で考えているアリかもしれない。(笑)

が、そういう危険を犯してまで私はVIPルームの中をこの目で見てみたかった。

隊長「たのむ。のぶお。行かせてくれ。絶対あるから。なっ。」

結局車をUターンした。入るのは私一人。で、のぶお隊員200円、私が300円でVIPルーム に入り、

目ぼしいソフトがあればかたっぱしから買って、後で山分け案が採られた。

のぶお隊員からは軍資金1万円が手渡された。

のぶお「気をつけてくださいよ。」

隊長「30分して私が戻らなければ、しかるべき所に通報してくれ。」

これはマジであった。(笑)

隊長「スイマセーン。」

カーテンをくぐると店長はまだそこにいた。

まるで私が戻ることを予想していたかのように。

隊長「入ろうと思います。入場は500円でしたね。説明はいりません。」

説明はいらないとエラそうに言ったことが、店長よほど気に入らなかったのか

無言でショーウインドウのレジ横に無造作に置かれてある”VIP”ボックスを指さした。

”VIP”ボックスといってもお菓子の箱を改造して店長が手書きでVIPと書いただけのものだ。

もうナメまくりである。

カッターでヘタクソに切られた箱の上部に500円玉を入れると私は第二のカーテンへ足を向けた。

中は雑然としていた。壁には日々運営しています。とあったが

昨日引っ越してきた かのように中は散らかっていた。

私がどこから見ていこうか悩んで立ち止まっていると私の背中から店長が

「左手奥がゲーム。真ん中が販売ビデオ。右手奥が男性雑誌です。」

と、声を掛けてきた。この説明は入場料金に含まれているらしい。

私は迷わず左の通路に進んだ。

そこはまさにパラダイスであった!!

確かにあった。私の予感は的中した。

通路の幅は1mくらい。奥に15mほど続いている。

両方の壁には8段組のラックが 奥まで続いていた。

そのラック全部がゲームソフト。 それも箱付きだ。

ファミコン、スーファミ、メガドラ、メガCD、PCエンジン、3DO、ネオジオ、64。

ラックが倒れそうなくらいソフトが詰め込まれていた。

私は嬉しさで眩暈を起こしそうになった。ここにきてこんな宝に出会えるとは!

のぶおも呼んできてやろうか?とも考えたが呼びに行く時間を惜しむ程のゲームソフトを前に、

私はソフトの背表紙チェックを始めた。 何千本あるのだろうか。任天堂の初期のファミコン箱付きソフト。

インベーダー、ギャラクシアン、スパイVSスパイ、エレベーターアクション。

今では箱付きを探すのが難しいソフトがてんこ盛りだ。

メガCDのラインナップも凄まじいものがあった。

ルナ2、シャイニングフォースCD、プライズファイター。

私が探していたソフトが一同に会している。奇跡か?!幻か?!

とりあえずレアなソフトから買い漁ることにした。

細長い通路の上をみると、これまた店長の汚い字で”ゲームソフト超特価” と

ポップが書かれてぶら下がっており、扇風機の風ですごい勢いで前後に動いている。

書き忘れたが、この店クーラーをつけていないのである。

店長の省エネか?

500円も客からとっておいて、蒸し暑いまるで倉庫のような店で見学させるとは 恐るべき店である。

さらに後ろを振り向くとさっきまで無かった目覚まし時計が私の注意を引いた。

まさか金をとった上ウインドーショッピングも時間制限なのか?

しかし熱さを忘れるほどの品揃えに私は自分の怒りをチャラにしておいた。

隊長「とりあえずレアなソフトからレジに持っていっておこう。」

私は5.6本のソフトをラックから注意して抜き取った。

なぜならぎゅうぎゅうに ソフトが詰め込まれているからだ。

夢にまで見たソフト達。箱・ジャケット付きだ。あいたかったよ。

しかし私の喜びはそこでプッツリと断線した。

店長の字でシールに価格が書いてある。

超特価!5980円

私の目はその時、点になっていたに違いない。

上を見ると扇風機の風で勢いよく踊る”超特価”のポップ。

のぶお隊員から預かった1万円で1本買えば終り!

別の意味で超特価!!!

サイコスリラー映画で「セブン」という映画があった。

映画のラスト 自分の嫁さんの生首を送り付けられたブラピは、

手錠をしている無防備な 犯人の脳天を拳銃で打ち抜いてしまう。

今、私に拳銃があれば私は迷わず 店長の頭を吹き飛ばしていただろう。

まさか?私はたまたま手に取ったソフトがレアなだけなのだ!と自分に 言い聞かせた。

そうだ。そうに違いない。プレミアソフトを元の棚に戻しタマ数の多いソフトを探す。

あった。任天堂のベースボールだ。 中古ショップでは50円で叩き売りされる一番のソフトだ。

この価格を調べればこの店の傾向が掴めるハズだ。

私は緊張しながらラックにゆっくりと手を延ばした。吉と出るか凶と出るか。

慎重にソフトをラックから引きずり出す。やはりそこには店長のシールが貼ってあった。

超特価!4980円

オッサン何考えて生きてるねん

私が理性のきく大人でよかった。私は涙が出そうになった。

500円の入場料が急に惜しくなったのである。

私が肩を落としてカーテンから店外へ出ようとしたとき後ろから店長の一声

「またお越し下さい。」

二度とくるか!

車のシートになかば倒れ込むようにして私は沈みこんだ。

のぶお隊員にさっきまでの経過を説明しながら車を家に向ける。

気分は最高にブルーであった。

その時私の胸ポケットの携帯電話が鳴った。

嫁「あんた11時半まで何してんのよ。」

隊長「何って、会議に決まってるやないか。」

嫁「どこの会社がこんな遅くまで会議すんねん。ウソ見え見えなんや。」

隊長「アホ。仕事しとるダンナに向かってその口の聞き方はなんや。」

その時、やさしいのぶお隊員が夫婦ゲンカを目の当たりにし、耐えきれなくなったのか?

の「奥さん。今日は僕が誘ったんです。悪いのは僕です。」

と携帯電話の横から大声で叫んだ。目は涙ぐんでいる。純朴な人間だ。

しかし嫁さんの電話はそこで切れた。 これ以上は書きたくない(笑)。