ホームページの星

 

 時は2010年。寒さも厳しくなってきた12月。場所は花の都大東京。かつて「アミーゴ」と名乗りホームページ製作に命を燃やしていた仲間達が一堂に会し、旧交を温めあう「同窓会」が間も無く開催されようとしていた。

路地裏にコートの襟を立てて目を細めて立っている体格のいい男。40歳になった「カナスギ」である。

カナスギ

ホームページ活動から10年後、究極の武道館「金杉武館」を設立。

水牛十番勝負」で一躍武道界にその名を轟かせた。現在門下生数千人を誇るカリスマ的武道家。

 

カナスギ「ふぅ〜っ、待ち合わせ場所はここだったかな?」

はまだ「お、おやっ、その鋭い眼光。白髪増えてるけどカナスギ君?」

カナスギ「ああっ、は、はまだ兄さん!!

はまだ

 ホームページ活動から10年後「そのスジ」に受けまくるプラモ屋「松匠堂」をオープン。

マニアックな視点で特に「朝の連ドラ」フィギュアシリーズではメインキャストの他にも街の老人や、飼い犬、通行人までモデル化し、通の店の名を欲しいままにしている。

 

カナスギ「いや〜、懐かしい。ホント10年ぶりですよね。活躍は聞いてますよ。順調みたいですね。プラモ屋。」

はまだ「そっちこそ。やっぱり武道家になっちゃったんだ。いまや「先生」だね。」

カナスギ「や、やめてくださいよ。兄さん。」

ワラビ「おやおや、まだ集合時間より早いっていうのに…。」

二人「ワ、ワラビ!!

ワラビ

 ホームページ活動から10年後、本離れが深刻化している2010年において、驚異的な発行部数を叩きだした「巨乳論」の作家。

2年連続ベストセラーを記録し印税で喰う生活に。その余裕から生まれた続編「爆乳論」もこれまた大ヒット。

そして取材時に知りあった巨乳アイドルとの結婚など話題は尽きない。

 

ワラビ「いや〜お懐かしや。ドモドモ。もうすぐイギリスさんも来ると思いますよ。さっき携帯に連絡入ったから。」

そうこう話をしているうちに、この場末の路地裏には余りにも似合わなすぎる漆黒のロールスロイスが勢いよく滑り込んできた。

イギリス「お待たせしてしまったかな?」

イギリス紳士

 ホームページ活動から10年後、「オフィス紳士」を設立して遂に弁護士に。

学術書にもかかわらず「ミミズ・オケラ・ミジンコにもわかる経済学」はコギャル層にもウケてベストセラーになった。

「一人の愛じゃ足りない」が口グセで未だに裕福な独身貴族の毎日。

 

カナスギ「うわ。紳士さんだ。出世したねぇ。運転手付きだよ。」

イギリス「ホント、10年たったらみんな変わるもんだ。みんな白髪も増えちゃってさぁ。ハハハ。」

MICK/小寺/Take「うおーい。一同御無沙汰〜。」

MICK

 ホームページ活動から10年後、本格的な塾経営で「ギター弾き語り英会話教室」がヒット。

鉄筋8階の「MICKビル」を建立。精力的活動で隠居はまだまだ先の話。

 

take

 ホームページ活動から10年後、MICKさん程ではないものの本格的な塾経営で鉄筋6階の「takeビル」を設立。

真面目な方針で順調に成績を伸ばしている。

 

小寺

 ホームページ活動から10年後、MICKさんの「小間使い」として就職。

地方紙などで「寒いエッセイ」をポツポツ書く地味な活動を展開している。

はまだ「いや〜、こうやって揃うとなにかこう感慨深いものがあるなぁ。」

のりの「って、私を忘れないで頂きたい。」

一同「のりの!!」

のりの

 ホームページ活動から10年後、小さなソフト会社を設立。そこで発売したソフト「海苔メール」が大ヒット。

ラーメンの具が行き来するというキッチュな内容がウケて某ポストペットにも並ぶ人気メーラーソフトの地位を不動のものにした。

 

のりの「関東のラーメンを食べ歩きしてたら集合時間を危うく忘れるところだった。」

MICK「10年たってもラーメン好きは変わらんなぁ。」

カナスギ「これで全員揃ったって訳だ。師匠を除いて…。」

ワラビ「師匠はしょうがないよ。だって失踪しちゃったままなんでしょ?」

MICK「うん。いまだに行方不明らしいよ。」

take「思えば師匠も200万アクセス達成あたりが華だったよなぁ。あの年は新聞にもバンバン出てたし。」

イギリス「連載のワガツマが本になってさぁ、あれまぁまぁ売れたんだよね。それが奥さんにバレちゃって印税がそのまま慰謝料になったという私生活でもオチを忘れない師匠(爆笑)。」

のりの「で、独身になってからの師匠はサッパリでしたよねぇ。続編の「我が妻との回想」が全然ダメで。」

MICK「湿っぽい湿っぽい。毎回「慰謝料」と「養育費」ネタの交互繰り返しだもん。読後感最悪だったよ。」

小寺「その後の渾身のエッセイ「愛などこの世に無い」もすぐ絶版になっちゃったでしょ?」

はまだ「それ出した後ですよね。師匠突然失踪しちゃったのは…。」

ワラビ「ホームページもいきなり消えてたもんなぁ…。」

イギリス「まぁまぁ皆さん。こんな所で立ち話もなんですから、私の行きつけのショットバーでも行きませんか?」

カナスギ「いやぁ、紳士さん行きつけの店なんて緊張しますよ。ここは庶民に帰って居酒屋でも行きましょう。」

のりの「賛成! その後のそれぞれの活躍話を肴に一杯やりましょう。」

take「ち、ちょっと皆さん。あ、あのゴミ箱の横に座り込んでいるボロ雑巾みたいな人…。」

MICK「ん? なんか見覚えがあるなぁ…。」

カナスギ「も、もしかして師匠???」

ワラビ「と、とりあえず行ってみましょう。」

はまだ「あ、あのう。あなたはもしかして師匠、ですか?」

呉「ん? おおっ、おおおっ。皆の衆、御苦労(注 巻き舌)」

イギリス「く、臭いっ。なんだこの臭いは。」

ワラビ「師匠からだ。きっと何年も風呂に入ってないんだ。」

カナスギ「一体どうしちゃったんです。師匠。真冬の東京の裏路地のゴミ箱の横で。何故ですか? 師匠。」

呉「ん? いやなに。ま、まだ旅の途中でな…。」

一同「旅の途中って、思いっきりルンペンスタイルだし!!

呉「いやぁ皆の衆。しばらくしばらく。それよりイギリス。煙草を一本よこせ。」

イギリス「い、いや、最近は葉巻しかたしなまぬもので…。」

呉「ちっ、シケた野郎だ。じゃあのりの。」

のりの「ど、どうぞ。」

呉「フーッ。極楽極楽。」

take「(小声)よく似てるけどあれって本当に師匠なんでしょうか?

小寺「現実を受け入れることができない。

呉「おおっ、可愛い女子高生。ホレ、見ろ。この雑誌に俺は連載していたんだ。」

女子高生「キャーッ!

カナスギ「師匠、一体何年前のマックピープルを持ち歩いてるんっすか!!」

MICK「それよりもスカートを堂々と引っ張って。犯罪行為だよ。」

イギリス「僕は絶対に弁護しませんから。」

呉「みなさ〜ん。この雑誌に連載していたのは私です。」

一同「思いっきり過去の栄光にすがってるし!

はまだ「なんて後ろ向きな人なんだ。」

ワラビ「皆さん。師匠に一体何が起こったのか。ちょっとさぐってみませんか?」

MICK「さぐるって一体どうやって?」

ワラビ「いや、私の「巨乳論」の人気コーナーで街角撮影コーナー「街角巨乳ペロリンチョ」というのがあるのですが…。」

一同「アンタ10年たってもバカ直ってないよ!!

ワラビ「そのコーナーを立ち上げるにあたって、精神科医から簡単な催眠術のレクチャーを受けたのです。」

イギリス「君ってホント、器用貧乏だね。」

ワラビ「貧乏は余計だ。」

カナスギ「まぁともかく、それは深層心理をさぐれる、って事でしょ?」

take「いまだにあれが師匠とは信じられない。ワラビさん。ひとつ頼みます。」

ワラビ「わかりました。さぁ師匠。あなたはだんだん眠くなるぅ〜。本音を言わずにはいられない〜。」

呉「ううっ、うううっ。」

のりの「だ、だいじょうぶなんですか?」

ワラビ「だいじょうぶ。トランス状態です。」

呉「全員に告ぐ。インフォシークのマニアック検索で、キーワード「呉エイジ最悪」で検索をかけろ。誰かが俺の悪口を言っているかもしれん…。」

一同「師匠、悪口気にしてるし!!

MICK「なんて小心者なんだ。」

呉「ううっ、うううっ。」

小寺「ワ、ワラビさん。これは一体?」

ワラビ「時間軸が移動しているのです。」

呉「ダメッ。ママ。

ワラビ「皆さん。どうやら幼児期に精神が移動したようです。」

呉「ダメッ。ママ。ダメッ。ぼくのおたんじょうびには よるおでかけしないって やくそくしたじゃないかっ。

一同「なんかとてつもなくイヤ〜なものを見てしまった気がする!!

はまだ「これは師匠の幼児期トラウマなんでしょうか?」

呉「ううっ、うううっ。」

take「また変わった。」

呉「やっぱり半ケツ状態のショートジーンズ。それも裾は引きちぎったような糸がモワモワ出てるやつ。

一同「この人はやっぱり真性バカだよ!!

呉「ルパン ルパン ルパン パオールッ

一同「相変わらず英語の歌メチャクチャ唄うし!!

カナスギ「こ、こんな人格が尊敬していた師匠である訳がない。」

のりの「同感です。」

MICK「一時期、個人ホームページで200万アクセスを達成し、一部カリスマとまで言われたあの呉エイジが、このような変態性格であるハズがないよなぁ。」

take「べ、別人です。そうに違いない。世の中には似た人が3人居るというではありませんか。」

呉「み、皆の衆。なんか見ないうちに全員羽振りが良さそうじゃないか。お、俺には少なからず恩義を感じてはいるよなぁ。一回くらいカルビを奢ってくれても罰は当たらんだろう。焼き肉を奢れ。10年分の利子だ。」

イギリス「あのですね。見ず知らずの赤の他人に焼き肉を奢る奇特な人間は、この2010年の東京では一人も居ないんですよ。」

呉「くうっ、生意気な。この森辰之進。」

イギリス「臭い手で触るな! さぁ皆さん。行きましょう。」

呉「ま、待ってくれぇ。あぁ、行ってしまった…。あっ、雪だ。東京で雪だ。奇麗だ。ちょっと疲れたなぁ。おなかも空いたなぁ。なんだか温かいなぁ。変だなぁ、雪が降っているのに。おおっ、オマエは僕が幼稚園の時に飼っていた犬。パトラッシュじゃないか!!」

呉「ど、どうして死んだはずのオマエがここに居るのだ。このバカ犬が。バカ、服を引っ張るな。せっかくの一張羅が破けてしまうではないか。行かないって。散歩なんて行かないってば。ええっ、何? コギャル・制服の店が近くにオープンした? 何故それを早く言わない。行こう。早く行こう。案内せい。」

その夜一人のボロ雑巾のような男は寒空の中、天に召されたという…。