呉エイジ、ライブ公演決定!!
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「大阪の暑い夏の夜」[呉エイジ大阪城ライブレビュー] 女性音楽ライター 濃霧霧子 呉エイジの初のバカペラライブとなった大阪城ホールでのライブ。私はなんとか前売り券を確保し、東京から大阪行きへの新幹線に乗り込んだ。 この日、東京での公演は「静炉巌」氏、大阪での公演は「呉エイジ」と、同日の夜に行われるバカペラビッグイベントであった。 本来「ア・カペラ」というものは楽器の演奏を伴わない「声」だけが勝負の音楽である。それはバカペラも同じことで、それがライブ公演を行い、再現できるものなのか? いくらラジカセを同期させたところで大観衆を満足させる音楽が派生できるのか? といったナーバスな気分に包まれる。 新幹線の中で私は暗い気持ちでライブのパンフレットに目を通していた。 その筋からの情報によるとチケットは完売であったそうである。 真剣にバカペラの音楽を敬愛する者の集まりなのか、それともラジカセの同期ミスを楽しみに来る弥次馬根性の集まりなのかはわからない。 しかし私は音楽ライターという仕事を通じて、歌謡曲全盛時代、テクノ時代、ホコ天ブーム、バンドブーム、ジャパニーズラップ、小室サウンドなどなど、いろいろな音楽ムーブメントを目にしてきたが、音楽業界というものはそろそろ「新鮮さ」の末期状態にあるのではないか? という思いを拭いきれなかった。 そうした時にWEBの世界で偶然に出会った「バカペラ」という音楽形態。 「もしかして次世代音楽の新たなムーブメントのヒントになるのではないか?」 という、なんの確証もない「希望」のようなものが私を襲ったのは確かな事実であった。 それを今夜、この目で検証しなければならない。 拳を突き上げて熱唱するライブとも、ギター一本で涙を誘うアコースティックライブとも、今までの「ライブ」という形態からは大きく逸脱したモノになるのは確かであろう。 このワン・ナイト・ライブの為に、両氏は中間地点である名古屋にて綿密なミーティングを数回にわたり行ったようであった。その会議の結果「勝算アリ」という結果が叩き出され、今回の東京・大阪城ドーム同時ライブというプロジェクトまでに発展したという。 呉エイジはその時「勝算はある。」と記者に宣言し、静炉巌氏も勢いに乗って「そしてそれは称賛に変るであろう」という意味深な発言をし、周りの記者を驚かせていた。 ナーバスな気持ちを完全に拭いきれぬまま、いろいろ考えるうちに新幹線は大阪駅のプラットフォームに滑り込んだ。 ライブの開演まではあと30分もあった。 幸いにして大阪は晴れ。ライブには絶好の日和である。駅を出て歩くと若者の集団がホールの方向に向かって行列を作っていた。「まさかライブの行列ではないでしょ?」 私の予感は的中した。混雑した駅から流れ出た若者達は、全て今夜のバカペラライブの為に向かっていたのであった。 チケット切り、照明、すべてがボランティアだそうである。馴れないせいか入り口では混雑が目立つ。 男性・女性の比率も五分五分といったところだ。 人込みに流されるまま漸く自分の指定席までたどりつくことができた。 落ち着いてステージを観察すると、中央後方にスタンドマイクが一本。そして左右に2本づつ、計4本の巨大なスピーカーが目に留まった。 この4本がコーラスを担当するのであろう。スタンドマイクは呉氏のファルセットボイス専用で、バックはテープを同期させてバカペラを再現させる仕組みになっているらしい。 前代未聞のライブに女である私も胸の内に熱い音楽への初期衝動が目覚めているのに気が付いた。 会場も見慣れたライブの光景とは全く異なるステージに困惑を隠せないようであった。騒めきはいつまでもやまなかった。 開演1分前。照明が落ちる。ホール全体が一斉にどよめく。 素顔を一度も見せたことのない呉エイジが遂に観衆の前に登場する。 スポットライトが一斉にステージを照らす。ここで私はまた面食らうことになる。 なんとステージバックの白いスクリーンは呉氏の影を映すスクリーンであったのだ。呉氏はステージの後ろで仁王立ちの状態でスタンバっていた。照明は呉氏を後ろから強烈に照らし、呉氏の影は5m以上にも拡大されて我々の目の中に飛び込んできた。 パンフレットのライナーに書かれてあった、 「私個人のことなどどうでもよい。音楽さえ残ればいい…。」 この言葉の意味が今ようやく解けた。 オープニングナンバーが4本の巨大なスピーカーから一斉に奏でられる。 「金がない」だ。 壮大なコーラスの前に圧倒されるシンプルなナンバー。「声だけ」というライブがここまで聴く者の神経を集中させるものなの? なんてスゴイの? 呆気にとられたまま次は最新シングルの「ローン」に流れこんだのよ。 もう完璧。完璧なの。「あいやいやいやい」のコーラスもCDとおんなじなの。 会場全体を怒涛のコーラスが包み込んだわ。 私は無意識のうちに腰をグラインドさせていたわ。 なんか目からは自然に涙が流れていたわ。楽器じゃないの。テクノロジーじゃないの。人間本来が持つパワー。声。その重戦車の様な声の行進に私の神経はズタボロにされっちゃったみたいなの。 曲は続いて「もういや」に流れこんだわ。 まるで教会にいるみたいだったわ。身体の中からジンジン熱くなってくるカンジ。 〜ええーかーーげんにーせーよー〜 のパートのところで私は熱さに耐えきれなくなってワンピースのボタンとブラジャーを両手で引きちぎったわ。 私の全てを見て! って衝動を抑えきれなかったの。同じような事をする若い女性が何人もいたわ。 曲が終るころには会場にいる全ての女性が全員そうしていたわ。異様な興奮に包まれて男達も奇声を上げだし、別の意味でも「総立ちライブ」になっていたわ。 でも恥ずかしくなんてない。人間が太古の昔「発声」することによってコミュニケーションを深めていった根源的な力が、私を生まれたままの姿にかえしただけなの。 平常心なんて保てるわけがない。こんなライブ生まれて初めて。 曲はかすれていく意識の中でようやく理解することができたわ。 「この曲を東京で今唄っている静炉巌さんに捧げます。」 「早く出て」のカヴァーだったわ。 この瞬間、会場にいる全員が同時にエビぞったわ。 〜おまえがいるから入れなーい。おー出〜 会場が同時にカウンターコーラスをキメるわ。「出」 巨大な呉氏の影は、よっぽどこの曲がお気に入りらしく、5mの影がダンスを描いたわ。その妖しい動きに会場全体がナチュラルトリップしたのは間違いなかったわ。もう何がどうなっているのかわからないわ。 私のパンツがどこに落ちているのかさえわからなかったわ。ただ頭の芯がジーンと熱くて、いつまでもこの熱狂が続くように、と子供が神頼みするようなことしかできなかったわ。 引きつけを起こす若者もいたわ。なんなの。この声だけの声のみに包まれる快感というのは。 声はそのままイッキに1オクターブ上へ駆け登っていったわ。 「パープリン」よ。 会場全体でパーパーパー パーパープリンの大合唱よ。いつの間にか会場全体が肩を組んでいたわ。朦朧とした意識の中で、よく「昔の記録映像でビートルズを前にした若い女性が失神するシーン」があって、自分では冷めた視線でそれをみていたんだけど、今夜、それは1999年に合わせたフォーマットで私たちを襲ったの。なんの説明もない声だけのライブで。それがバカペラだったの。 最後の「ぷぅ」のところで私はとうとう失禁してしまったわ。 私だけじゃないのよ。会場全体が同時にスイッチを押されたようにそうなったのよ。会場全体の失禁による熱気が湯気になって全体に立籠めたわ。呉氏の影が幻のようにぼやけて見える。 ここで私の意識はプッツリと途切れたわ。気が付くと病院のベットの上。会場全体が失神したため、近隣の病院は緊急事態になっていたことは、その夜のニュースで知ったわ。 最後まで意識を保てた人からようやく昨夜のセットリストを完成させ、バカペラ2の曲をいち早く発表していたのには、自分の神経の細さを恨んだわ。ニューアルバムからの曲は記憶の中に全然ないんですもの。
今度の姫路城ライブは絶対に観に行くべきよ。新たな音楽体験が貴方を包み込むのは間違いないわ。 完 |
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