祝!タケダーズ新曲レビュー

武田てつやと、谷村しんじと、いかりや長介&

松田ゆうさくの声をブレンドした時

マジックは起った。」ニューヨークタイマーズ誌


まだ”タケダーズ”を聴いていない方は「こちら」からどうぞ。

 

 私の”ひとりアカペラ”の師”静炉巌(せいろがん)”さんの新しいナンバーがついにWeb上で発表された。

 これまでメールのやりとりだけで、その形式も形態も秘密のベールに包まれた、いわば幻の曲を、私が静炉巌さんのメールに感化され貧しい音楽知識で作り上げた一人アカペラ曲「パープリン」を、先にWeb上で発表した事が呼び水となり、ついに大御所が重たい腰を上げたのであった。

 私が29という年齢になり、まるで思春期の頃のような創造的刺激を受けたメールでの一文を紹介するところから話を始めなければならないであろう。

静炉巌「武田てつやのモノマネで、声を重ねたことがある。」

 この一行が決定打であった。その”バカペラ”ともいうべきコンセプトが私の嗜好に見事シンクロした。そして空想は波紋のように広がった。

「一体どのようなものなのだ?」「スゴ面白いものに違いない。」メールで私がいくらラブコールを送ろうとも、照れ臭いのか、バカペラの真髄の全貌を知ることはなかなか叶わぬことで、

「それならば、バカペラのコンセプトを引き継いだものを自分の手で再現してみよう。」

と思い立ち、先日Web上で公開させてもらった事は御存知の方もいることだろう。

 それが今回よい結果を生んだ。これは”世界バカペラ界”の宝だ。タケダーズという謎のグループの、極限までおバカな歌詞と、それでいてとてつもなく美しいハーモニー(笑)。氏はバカペラをアートの域まで高めてしまった。

 冗談音楽というものがある。こっけいな”ボヨーン”とか”ビローン”などと鳴る楽器で笑いを誘う音楽や、クレージーキャッツのような歌詞で笑いを誘う音楽などだ。バカペラはそのどれにも属さない。あるのは綿密な計算と複雑なハーモニーだ。笑いのポイントが表層的なものではなく、真剣な曲ならともかくおバカな歌詞を部屋に籠り何重にも重ねる行為を聞き手に想像させるところがニューウエイブ(新しい波)なのだ。

 それでいて出来上がったものは、笑いとも感動とも形容しがたい、そう。まるでチャップリンの映画を観た後のような作者のストイックさに聴くものは涙に打ち震えるのだ。

 確かに自分の声をWeb上で流すのは恥ずかしい。その恥ずかしさの目先を変えさせたのが静炉巌さんの”モノマネ”という手法だ。私の場合は恐れ多くも”ブライアンウイルソン”を、静炉巌さんは”武田てつや”と”谷村しんじ”と”いかりや&松田ゆうさく”が憑依したようだ。

 このモノマネという行為が「自分の声ではないのだ」という安心感を生み、自由な創作表現を可能にした。さらに氏の場合は聴き込めば、恐るべきことに三人のモノマネが”高””中””低”のパートを意図的に担っていることに気付き、その緻密なモノマネ芸イコオル3パートハーモニーへの昇華という図式を目の当たりにし、聴く者は戦慄を憶えることであろう。

 ロックの歴史の中で、ビートルズの「ラバーソウル」を聴いたビーチボーイズのブライアンウイルソンは感動し全精根を傾けて「ペットサウンズ」を制作し、それを聴いたポールマッカートニーが感銘を受け「サージェントペパーズ〜」を創り上げ、ささやかな報復とした実り多い時代があった。

 結局ブライアンは「サージェント〜」の完成度に完全にノックアウトされ、製作中のアルバム「スマイル」を放棄し、精神に破綻をきたしてしまった事は有名なエピソードだ。

 今回の私はまさしくブライアンの”それ”と同じである。