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すごい面接
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私は会社勤めのサラリーマンだ。 サラリーマンとは是即ち”我慢の職業”なり。 文句があるんなら自分が経営者なり独立なりなどして自分で食いぶちを稼げばいいことで、それが出来ないのであればやはり会社に従属して利益を追求していかなければならない。 仕事が出来るのはあたりまえ。毎日頑張ってるのになんて言葉は泣き言。企業はいちいち努力に感動なんてしないし、しちゃいけない。 だから私は会社勤めをしていて、その場で不平不満を言いたいことがあったとしても、言う自分が先にイヤになるのである。自分の力の無さも含めて。 でもって今もサラリーマンなのであるが、会社に属していると新入社員との出会いやら、面接に来た方との応対など、いろんな方に出会う機会が多い。 その数々の思い出の中で、何十人かに一人「スゴイ人」と出会ってしまう事がある。 私の会社はWeb上で割れていないと思うが、個人のプライバシーを尊重して仮名を使って話を進行していく。 ※ いつも通り仕事をしていると入口の方で物音が聞こえる。立ち上がって覗いてみると。どうやらお客のようだ。近くに誰もいなかったので私が応対に出た。 呉「はい。どういったご用件でしょうか?」 男「今日、面接の約束をしている者です。」 面接って…。皆さんは面接というものにどういったイメージをお持ちであろうか? 派手な色は極力避けた没個性ともいうべき紺やグレーのピチピチスーツに、糊の効いたワイシャツ。ネクタイなどは横の格子模様あたりがよろしかろう。髪の毛は1週間前くらいに散髪に行きました。くらいの伸び加減がベター。なぜなら前日に散髪に行ったなら 「金髪やロンゲを急遽直してきたな。」 などと企業側に勘繰られるからだ。当然ヒゲはきれいに剃ってあり、必要事項などを記入するための筆記用具が入ったカバンなんぞを小脇に抱えて、ちょっと緊張して震えてみせると好感度も上がるというもんだ。 しかし以上のイメージの内容とまったく対極の方が”面接”と称して訪れた場合まずどういう応対をすれば事を穏便に運べるか? 私は目の前に立つ、これから我々の仲間になるかもしれない人物を注意深く観察した。 まず服だがこれまた オレンジのポロシャツ 普通ならこれだけで、もう話は済んでいるのではないだろうか。で、体格はこれは面接とは関係ないが”巨漢”である。私を横2人ならべても隠れそうなくらいだ。 身長も高い。180近くはあるだろう。さらに髪の毛はオールバック。 いきなりポロにロン毛だ。 これが2.3秒の間に私が感じた事である。 呉「面接と申しましても、社長の方から3時と聞いておりますが・・。」 実際、この時で昼の1時半。あまりに早すぎる。社長もそのつもりで外出中であった。 「遅刻するより良いと思いまして、早めに来ましたっ!」 この時点で私は相手が”ヤバイ方”だと察知した。ヤバイといっても私は別に差別をしている訳ではない。 世の中には口ベタの人もいれば、人をその気にさせてしまう雄弁家もいる。 私が言いたいのは、会社なり企業なりに仮にも面接に来ているのに、自分の生活様式を変えないで自分のルールのまま来てしまう人の事を言っているのだ。 同僚とは半分共同生活のようなものだ。1年間トータルすれば嫁さんと居る時間より長く接する間柄になるのだから、”自分中心”みたいな人間は共同生活をしていく上では害悪と言わざるを得ないのが社員としての意見だろう。 経営者としたら利益を産めれば個人のパーソナルなど二の次になるが。 まず、大事を取ったにしろ10分や20分ならまだしも、約束の1時間半前はあまりにも早すぎる。 どう時間を潰すのだ? その間の社員の迷惑は考えないのか? 遅刻するよりはいい。とは手前の論理だ。 私は目の前に直立している人物が本当に我が社に面接に来ているのか不審に思った。 呉「失礼ですが、どちら様でしょうか?」 私が極力相手を刺激しないように、恐る恐る訊ねてみると、 相手はブチかましてくれた。 男「わたくしのお名前は岡田です!!」(仮名) 面接をしたことがない方は、読んで教訓にしてほしい。実際、世の中には常識というつまらないものがあるのだ。 で、悲しいかな、そのつまらない常識から外れた人を見て冷笑するのも世間なのだ。 相手は場慣れしていなかったのだろう。最上級の丁寧語であったに違いない。 しかし人に名前を聞かれて”わたくしのお名前は”はマズだろう。 ”あなたのお名前は?”幼稚園の先生じゃないんだから。 せめて”岡田と申します。”くらいは言ってほしかった。 ”お”をつければすべて良し。ではないのだ。 聞かされた名前は確かに本日3時、社長をブッキングしている人物だ。 私は思いっきり困惑した。相手を見ると視線は宙を彷徨っている。 そのまま玄関で立たせておく訳にもいかないので取りあえず応接室にあげることにした。 呉「だいぶ待つようになりますが、お上がりください。」 私が来客用のスリッパを出すと男は靴を脱いだ。相手は私がスリッパを床につくかつかないかの所で足を入れようとしてきたので、私はもう少しで指を潰されるところであった。 その時チラっと後ろの束ねてある髪の毛が見えたのだがチョンマゲを束ねていたのは家庭用の輪ゴムであったのは私の目の錯覚ではない。 相手はスリッパに履き替えると相手は極度の緊張からなのか大声を発した。 男「失礼します。で只今1時33分をまわりましたっ!」 私は相手を先導しておいてドリフのように前につんのめる所であった。 なんで今時刻を復唱する必要があるのか?それを私に報告して何になるというのか? ジーパンにオレンジポロ&ロン毛の面接人は巨漢を揺らしながら堂々と応接セットに腰掛けた。 私は困った。私の手に負える人物ではない。困った末に私より年長の営業の人に社長が来るまでのつなぎをお願いした。応接室といっても、ついたてで区切られているだけなので声はまる聞こえである。 ここからは他人事で安心してツッコめる。しかし仕事中であったため断片的なのが惜しいところだが。 営業「まず履歴書をお預りします。」 営業も恐る恐るの応対だ。 男「本日、都合により持参しそこねましたので、同時進行ということでお願いします。」 私は爆笑寸前であった。何がどういう風に同時進行なのか?なんで面接に来て履歴書がないのか? どんな都合であれば面接日に履歴書を持参しそこねるのか? その後、この”同時進行で”というフレーズは、社内でちょっとしたブームを起こすことになる。 営業もかなり困っているようであった。私も注意深く様子を窺っていると、どうやら相手の真意は 「今、履歴書ないから、ここで書きますから、書く間にいろいろ聞いてください。」 ということらしかった。もうナメまくりである。 それにキャッチボールになっていない自己完結の会話。やはり相手は筆記用具を出すためにガチャチャ筆箱を開けているようであった。 そこで同僚の女の子がお茶を出しにいく。女の子はお茶を出し終わると社員の方に小走りに走ってきて小声で報告した。 女の子 「あの人、青いマーカーで履歴書書きながら面接してる…。」 面接をしたことがない人は教訓にして欲しい。履歴書はマーカーで書いたらブーです。もちろん色つきもダメです。黒いボールペンが望ましいです。 ついたての向こうの営業の困る顔が浮かんできそうであった。 しかし、その行為をとめる様子もない。自由に彼を泳がせる方針をとるみたいだ。 相手は必死に青いマーカーで書類を埋めていってるらしかった。しばらくしてペンを走らせる音が止まり男はおもむろにこう言った。 男「ここに家族の欄がありますが、わたくしの家庭は非常に複雑な家庭環境なので 腹がよじれそうであった。家庭環境云々はそれぞれに事情があるので仕方の無いことだが面接を面接人が仕切っているのが、たまらなくオカシかったのだ。 面接をしたことがない人は教訓にして欲しい。面接人は面接を仕切ってはいけない。聞かれたことに素直に答えればよい。自分でどんどんリードしては面接の意味がない。 男「いやぁ。両親がそろそろ”バイトを辞めて就職しろ”と言うのでここに決めました。」 もう彼の中では就職は決定しているようだ。私もこれくらいの自信があれば何か大きなこともできるかもしれない。 営業は会話に詰まり履歴書を見て質問をはじめた。 営業「ここの趣味・特技は空欄ですが、何かありませんか?」 男「しいて言うなら私の特技は”ボランティア精神”が旺盛なことです。」 私の腸は3回転半くらいよじれるところだった。しいて言うなら、と謙虚に言っておきながら旺盛ときたもんだ。業種にいま全然関係ないじゃないか。 それにボランティアは特技か? 精神は芸なのか? ここで営業は自由に泳がせる事を辞めた。丁寧に説教らしい話をはじめた。相手は就職が決定している気持ちを修正する気がないようで話はすれ違うばかりであった。だがしばらくの問答の後、相手は納得がいかないように帰っていった。 彼には悪い結果となってしまったが、彼の事はしばらくの間、社内の話題を完全に独占状態であった。 |
完
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