クリスマスプレゼントといえば・・・。


今の子供達が熱中しているものとはなんであろう。

やはりテレビゲームか?それともヨーヨーか?

私が子供の頃はといえば、誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントといえば、人気は圧倒的に超合金であった。

遠い記憶をさかのぼれば、最初に親に買ってもらった超合金は確か”イナズマン”の乗る愛車「ライジンゴー」であったと思う。

今の視点から見れば、そのライジンゴーのフォルムはどう見ても敵キャラのそれで、イナズマンとのギャップもさることながら、車体の前方が巨大な口の形をしていて、”アァー”という奇怪な音をたてて開き、そこからミサイルを連発する様は夢に出そうなほどのインパクトがあった。

そのライジンゴーも子供の頃のお約束のように、風呂で遊んでサビサビになった後、砂場で行方不明になるパターンだった事は今さら書くまでもなかろう。

それから思い出深い超合金はといえば、やはりコンバトラーVの”デラックス合体セット”だろう。

こいつは”合体超合金”のハシリで、5体の超合金を集めればテレビで見る合体と同じ変形をして巨大ロボットになるという、当時としても斬新かつハイテクな玩具であった。

しかし当時の私は先走りしすぎて、5体セットより先に発売されていた単体セットを誕生日に買ってもらい、ずっと頭部の戦闘機のままで遊ばざるをえなかった。

弟の誕生日も兄の特権で無理矢理腕の部分を脅して買わせて、クリスマスプレゼントには胴体のタンク部分までは良かったのだが次の誕生日がくるまでには番組が終了してしまい、 テレビはボルテスVになってしまっていた。

番組が終了すれば当然オモチャ屋からも消えるわけで、我が家ではいつまでも足のないままのコンバトラーVが恨めしそうにオモチャ箱の中でバンザイをしていた。

この一件は子供心にも、

「合体モノはセットで買わなければ無意味。っていうか無駄。」

という教訓を植え込んだ。

その後、強烈なプラモデルブームが来たので、超合金は下火になったのだが、プラモブームの渦中にありながらも、消えかかっていた超合金魂に火をつけさせる商品が登場した。

それは”六神合体ゴットマーズDXセット”である。

これは凄まじくデカく、また値段も当時のオモチャとしては破格あったと記憶する。合体変形もTVコマーシャルをみる限りでは完璧。主人公のマーズが乗り込む、飛ぶ時に手首を”クネッ”と曲げて、仮に主人公がビルから落ちようとも光並のスピードで駆け付けて無事キャッチしてくれる”ガイヤー”も付属。

しかし子供心にこのセットは、親にねだるにしても気が引けるほど高価なもので(幼い頃から「ウチは貧乏だ!」と洗脳され続けてきた!)弟とも相談した結果、

・今年のクリスマスプレゼントは2人で一つ。

・それは兄弟仲良く遊ぶという意味

・だからゴットマーズを買って!

というお願いを健気にもしたのであった。

親父は2つ買うのが一つになったので気を良くしたのか、

「よっしゃサンタに言うとく。」

と、威勢のいい返事をしてくれた。

それでも我々兄弟は心配の色を隠しきれずメモ用紙にエンピツで「ゴットマーズDXセット」と書いたメモを親父に託し、

「これを絶対サンタに渡してくれ!」

と頼んだほどであった。

今思えばサンタの正体などとっくにバレているのに、このような子供の駆け引きも懐かしく面白い。

待ち遠しいのはクリスマスイブの夜。

「六神合体」する6体のロボットを、どう3つに割るか。ガイヤーはどちらが所持するのか? ガイヤーをとるなら4体と2体でないと割が合わない。

などと多少モメながらも(モメたら合体できない。)ついにイブの夜が訪れた。

夕飯が済むと親父が会社から帰ってきた。

我々兄弟はいつもはやらないクセにこんな日だけは玄関まで出迎えるのだった。(現金なものだ)

「おかえ・・・。

言葉を最後まで言わないうちに、我々はある異変に気が付いた。

包みが小さい!

サンタに渡したメモは”ゴッドマーズDXセット”だったハズだ。

親父でも両手で抱えて持って帰らなければならない程の大きさであったことはオモチャ屋で確認済みである。

それを助けるために我々は玄関まで出向いたのだ。

イメージトレーニングでは「お父さん。僕たちが持つよ!」と言いながら兄弟2人で仲良く部屋まで持っていくハズであった。

それなのになんなのだ? この小ささは? 

親父はニコニコと包みを片手に持って靴を脱いだ。

「お父さん。ゴットマーズは?」

「まぁ上がれ。」

なんなのだ? 親父のこの余裕は? 車の中に隠してあるのか? この包みは”ジャブ”なのか?

「ほーれ。サンタさんからクリスマスプレゼントだ。」

親父が床に包みを放り投げ、床に付くか付かないかの所で我々はピラニアの如く包みを引き裂いた。

「お父さん。何これ?!」

包みの中には「フィンガーポップ」と書かれたオモチャが一つ入っていた。

これは説明すると当時ルパン3世がCMをやっていて、形はマシュマロみたいな円柱形のスポンジを親指と人さし指ではさんで持って、的に当てるという至極単純なオモチャであった。

「いやぁ。オモチャ屋さんが言うには、このオモチャが今年の大ヒット商品だって言うんだよ。これを持っていれば友達に自慢ができるらしいぞ。」

”親父サンタの正体自分でバラしてるし!”

弟の方をチラと見ると、”当分、立ち直れそうにない”顔つきであった。

そうして親父に意見する気力さえ奪われている様子であった。

多分部屋に戻ったら アイツは泣くであろう。

私はそれに加えて、親父のオモチャ屋での様子を空想した。私達もゴットマーズの価格をサンタさんに告げておけば、こんな土壇場での悲劇は回避できたかもしれない。

しかし私達は価格を告げることによって却下されるのを恐れ、姑息な手段に出た。

だがプレゼントを2つから一つにし、子供なりにも精いっぱいの良心を見せた。

多分親父はオモチャ屋でゴットマーズの価格を確認した時、飛び上がったに違いない。そうして親父は店員に一番ヒットしていて安い商品を頼んだのだろう。

それが”フィンガーポップ”であった。

親父はさっさと部屋着に着替え、ビールを飲みながら野球に熱中する”フリ”をしている。

親父もドキドキしているハズであった。約束のプレゼントとはあまりにも価格差がある。

我々は破いた包みをゴミ箱に捨てると、フィンガーポップを持って肩を落としながら部屋に入った。

弟は布団に倒れ込むようにして案の定泣き出してしまった。合体超合金と、ただのスポンジ。この落差はあまりにも大きかった。

峠を越えた親父はご機嫌で、階下からは

「よし!打て!!」

と野球に夢中のようである。

その声が響くたびに、弟のむせ返る声が大きくなったような気がした。

オモチャは2つが1つになるわ、それは例年になく安いわ。その晩の親父のビールはさぞかし美味かったことであろう。

祝福されるべきクリスマスイブの夜に、なんで私達は泣かなければならないのか?

しかも大声で。

楽しみにしていたクリスマスが、

地獄のクリスマスへと豹変した!

「そうなんだ。ウチは貧乏なんだ。だからゴットマーズは無理なんだ。」

私は必死になって自分に言い聞かせていた。

ちなみにその後、友達の間で”フィンガーポップ”がブームになった事など一度もなかった。





追記 「メールにてクリスマスに野球ですか???」というご指摘を受けました。

親父がビールのんでテレビ見る時はいつも野球だったのでそのまま書いてしまいました。クリスマスに野球やってるわけないわな。何みてたんだろ。