小説「苦笑」について

実は、生まれて初めて書く小説なんです。 連載小説の形式を取り、どこまで書き切れるか解りませんが楽しんでもらえたら嬉しいです。

(99.4.1)

 


 作 呉エイジ

 

「苦笑」もくじ
   
 第一章 前夜
 第六章 討論
  第二章 求人
  第七章 口論
   第三章 店舗    第八章 激務
    第四章 出勤     第九章 通達
     第五章 夢想      第十章 帰路

 

第一章 前夜

 

なんだかんだいってもダメ人間はダメ人間なわけで、まず第一”努力”ということをしない。努力イコール”無理をすること”という認識自体が大問題なわけであって、それは幼少の頃も高校生である今もそれほど大差はないのであった。

子供の頃「働くおじさん」というテレビ番組があった。

毎週いろいろな仕事場で働いているおじさん達の姿を「かっぱえびせん」なんぞを片手にホゲーっと観ながら、幼い心にも漠然と考えていた小さな恐怖。

「僕は将来、乞食になるかもしれない…。」

なぜなら毎週その番組で紹介されている仕事は、自分にとってどれもトテツモナク難しい仕事ばかりであり、逆立ちしたって習得できそうにない内容の高度な仕事ばかりだったのだ。

母と買い物に行った時、公園のベンチで一人の浮浪者が気持ち良さそうに昼寝をしていた。着ている服はボロボロで元の色は多分”白色”だったのだろうが、いまではすっかりネズミ男系に変色している。

「じーっと見ちゃいけません。」

母は僕の腕を強く引っ張った。母の手に引かれながらも僕は後ろを振り返り、将来の自分の姿と重ね合わせて、勝手に恐怖で震えていた。

「英語なんて社会に出たら必要ねぇ。」

日曜日、昼前に起きてきた父が、ランニングシャツ姿で新聞を見ながらボソリと言った。僕に向かって言ったのか、独り言だったのかよくわからなかった。

「パパさんは、ああだから…」

台所へお菓子をとりに行った時、母がそう呟いた。これも僕に向かってなのか、独り言だったのかよくわからなかった。

「親父がそう言ったから…」

これは子供の卑怯な言い訳だった。んでもって全然勉強しなかった。遊んでばかりいた。嫌いな勉強をしない理由付けを、親父の一言のせいにしていた。ダメ人間のダメ人間たる所以である。

勉強もせず、スポーツもせず、毎日を空想して過ごす日が続いた。空想といえば”綺麗に聞こえる”から不思議なものである。たいていは友人とマンガの同人誌作りに熱中し、現実から目を背けることばかりしていた。

その頃、背伸びして聴き始めた尾崎豊に感動し、友人と二人で「サラリーマンにはなりたかねぇ」と、よく一緒に唄ったもんだった。

友人はメキメキ上達した。「俺はマンガ家になる。オマエもそうだろう?」とっくの昔に自分の上達の無さに呆れていた僕は、それでも熱く語る友人の手前、苦笑しながら首肯くしかなく、

「構想が、あとは構想が固まればモノになる…」

などと出来もしない言い訳ばかりしていた。

その頃から「サラリーマンなんて、社会なんてクソくらえ」と考えていた自分が、「クソと呼ばれるのはもしかして自分の方じゃないのか?」と考えるようになった。

子供の頃の漠然とした不安が、急に僕を襲った。

/つづく/