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第五章 夢想
バイト一週間目。僕は仕事を順調に憶え、手早くこなした。客が来たらテーブルに案内し人数分の水を出す。店はバイキング形式であったので注文を取る必要もない。一度水を出せば、水もセルフサービスなので、後は食べ終った食器の後片付けや鉄板洗い。なくなりかけた肉を厨房に行って用意してもらうことくらいで比較的楽であった。 混み合う時間は決まっており、夕食前、だいたい4時頃が客がスコーンと減る時間帯であった。 そんな時は入り口付近にボーッと立って空想に耽る。別にすることもないし、客が来ればどこにだって座れる状態だ。 店内は有線放送が流れている。渡辺美里の「マイレボリューション」が汚い店内に寂しく響いていた。 なんだかんだいっても高校生。ヒマな時はついエッチな事を考えてしまう。高校生なんて毎日がサカリのようなものだ。あふれる欲求が顔の皮膚を突き抜けニキビと化す。 片思いの同級生がいた。名前は”かほり”。色白でショートカットでスポーツ万能。原田知世よりカワイイと学年中の評判であった。残念なことに”かほり”は野球部のキャプテンと付き合っているというウワサであった。イイ女は付き合う男も条件がキビしい。 たくさんの男に話かけられるが、その時”かほり”はまるで”汚らしいものを見る目”をすることがあった。。気位のメチャクチャ高い、難攻不落な女であった。 もちろん一度も話したことなどない。いつも遠くから眺めているだけであった。 空想する時は、目を開けていても目の前に別のスクリーンが現れる。遠くから見てもサボっているように見えないのでラッキーである。視点は固定され目の前にしだいに別の映像があらわれる。今日のえじきももちろん”かほり”だ。 教室の中”かほり”と二人。”かほり”は僕に気があるようだ。ニコニコと野球部のキャプテンにするように僕に微笑みかける。僕は余裕で”かほり”を見つめる。”かほり”は僕に見つめられるのを知ると、ポッと頬を赤く染めた。 体育の時間の後、”かほり”はまだ着替えておらず体操着にブルマー姿だ。少し恥ずかしげな仕草がなんともいじらしい。 「今日は足ジャンケンをして遊ぼうか。」 空想の中の僕は臆することなく”かほり”に話しかける。 「足ジャンケン?」 「そう。足でグー・チョキ・パーをやるんだ。」 ショートカットの髪が揺れた。恥ずかしそうな目で僕を見る。 「最初はグーだ。軽くジャンプして足を揃えて着地してごらん。それ。」 僕の命令に少し照れながらも”かほり”は可愛くジャンプした。 「グー。」 声が小さめなのがなんともいえない。ブルマー姿のかほりは両足をくっつけて着地した。腕を後ろに回し、形のいい太ももはピタッと閉じていた。 「よーし。じゃあ次はパーだ。パーは着地の時に大きく足を広げるんだ。それ」 「パー」 この時点になると空想中の私の顔は、クワッと目が見開かれ、さぞかし怖い顔になっていることだろう。それでも若者の空想は止まることを知らない。 ブルマーから奇麗な足がスラッと両方にのびていた。形のいいふくらはぎは絶品である。”かほり”は恥ずかしそうに下を向いたままだ。 「よーし。よくできた。じゃあ最後はチョキだ。チョキはジャンプした後、足をクロスさせて着地するんだ。いいね。」 ”かほり”は僕の言いつけを聞くと耳まで顔を赤らめた。 「足ジャンケンの”チョキ”はね。足が交差しているからブルマーがよじれて、その食い込み具合がなんとも色っぽいんだな。」 「イヤーン!!」 「兄ちゃん。兄ちゃーん。水持ってきてくれるかー。」 作業員風の男が僕の空想の一番のクライマックスを容赦なく遮った。憑き物が落ちたように一瞬ガクッとした僕は慌てて現実に帰り、声のした方に顔を向けた。 「はいはい。ただいまー。」 水を汲んでテーブルに運ぶ。よく考えれば水もセルフサービスじゃないか。水を置くとき客に注意をした。 せっかくのクライマックスシーンが、作業員風の男のダミ声で台無しである。先ほどの空想は”チョキ”のために引っ張っていたようなものだ。 空想の続きに入る気分がすっかり失せてしまった。 店内の曲はいつの間にか「夜霧のハウスマヌカン」に変っていた。 |

/つづく/
/目次/
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