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朧げな記憶を辿りながら…〜新快速大阪行き〜
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※ ”次は〜明石ぃ〜明石ぃ〜 お出口左側のドアが開きますので御注意ください…” ※ ヨメに「明日は仕事だ!」とエラそうに言い放って土曜日一日を遊び倒す。というのはストレスの多いダンナ族にとってはよくある話なわけで、半年ほど前、手持ちが足りずに泣く泣く諦めた二万円もする昭和初期発行の探偵小説を買い付けに、大阪は古本商店街「かっぱ横丁」へと繰り出す私なのであった。 普段、電車に乗り慣れていない私にとって、”電車”というものは新鮮な場所である。 素晴らしい足のラインで次々と商談をまとめてしまいそうなミニをはいたOLが窓ぎわの席に座っている。土曜日だが営業の最中なのだろう。 ラッシュアワーを避けたので電車はそれほど混雑はしていなかった。 窓の外の景色にも飽き、自然とそのミニの足に目がいってしまいがちなのだが、あまりしつこく見続けていると「セクハラ!」などと怒鳴りそうな力強い意志がキレイに処理されたマユ毛から伝わってきそうであった。 あれは明石を過ぎたあたりであったか… ビジネススーツを着込んだ40代前半の太った管理職っぽい男性と、お世辞にも”カワイイ”とはいえないポッチャリとしたOLが私の真後ろの席にドカドカと座り込んできた。 以下はその時の会話を文章にするものである。 ※ A「それにしてもなんやな。なんで土曜日やっちゅうのにワシらだけスーツ着て、なんで会議なんかに行かなアカンねん。」 B「えぇーっ。岡田さん会議イヤですか? 私は事務所の中にいるより、こういう方がよっぽどいいですけどね。」 A「まぁそうやけどな。でも周り見て遊んでる奴らばかりやとなんかこう頭くるわな。」 B「でも会議が終ったら月曜までに提出したらいいだけですから、私そのまま街でウインドゥショッピングでもして帰ろうと思っていますからウキウキですよ。」 A「で、どないだ? 和田ちゃん。事務所の方、もう馴れたか?」 B「…。」 A「どないしたんや? 何かイヤな事でもあるんか?」 B「実は…営業の一部の人でスッゴイ私と東さんを差別するんです。」 A「あぁ、あの短大出て入った東ちゃんか。で、どんなんや?」 B「私がこの前「帰りに●●寄って書類を忘れずに取ってきてくださいね」って頼んでも返事なく携帯を切るんです。でも東さんだったら「東チャン。これ持って帰ってきたんでココ置いとくで」って笑顔で言うんですよ。」 A「それは柿林と多田か?」 B「…。」 A「そうやろ? そうなんやろ? よっしゃワシからよう注意しとくさかい。」 B「イ、イヤ言わないでください。私が岡田さんに”チクった”って言われて営業の人達言うこと聞いてくれなくなりますから。」 A 「そないな事気になるんか? まぁエエわ。それとなく見掛けたら別の事で注意しとくさかいにそないに落ち込むな。そんな顔してるとカレ氏も逃げていくで。」 B「私…カレ氏なんていませんよぅ。ヤだなぁ岡田さん。」 A「えぇーっ。ウッソー。和田ちゃんカレ氏おれへんのか? ウソやろ? 若いのに。」 B「ホントですって。岡田さん大げさなんだから。カレ氏なんて私無理ですよ。岡田さんも知ってるんでしょ? 私この前台所の横を通った時、営業の人達が”ブースカがなぁ…”って話しているの聞いちゃったんです。きっと私の会社でのアダ名…ブースカなんだなぁ…って。」 A「…ゴホッ。イヤ、イヤ。ワシは知らんなぁ。もしそうやったら大問題や。注意しとく。それも多田か?」 B「いえ、牧さんです。」 A「牧か… アイツは仕事はようできるが口の過ぎるところがある。まぁ悪気はない男なんやけどな。気にせんとけや。」 B「もう… 会社辞めちゃおうかなぁ…」 A「な、なに言い出すんや。ブースカの事気にしてるんか? そんなもん昔テレビ番組あったしオモチャの話してたかもしれへんやないか。そんな簡単に物事を決めつけるな。」 B「いえ、きっと私の事なんです。私わかるんです。」 A「和田ちゃ〜ん。和田ちゃんは確かにポッチャリしてるで。で、足もまぁポッチャリしとるけども足首なんかキューッとこうメチャクチャ細いやないか。」 B「足の話はしないでください。」 A「ポッチャリした女の子はカワイイで。自分”相田翔子に似てる”とか言われたことないか?」 B「ま、まさか、そんな事言われたことないです。」 A「落ち込むな。落ち込むな。よっしゃワシが今晩メシおごったるさかいに。」 B「え、いえ、あの悪いからいいです…」 A 「遠慮すな。かまへんやないか。ワシがエエ言うとるんやさかい。で、何が好きや? 和か?洋か?中か?」 B「ま、まぁ…中が好きですけど…」 A「よっしゃ決まりやで。中華のウマい店ワシが会議終わったら案内したるさかいな。」 B「でもなんか悪いですから…」 A「金の心配やったらいらんで。それにワシの行く中華屋はギョーザなんて置いてないからな。」 B「でも、やっぱり帰りが遅くなりますし…」 A「そんなもん家に先電話しとったらエエがな。明日は日曜やし。」 B「…。」 A「決まりやで。終ったら行くで。」 B「でも岡田さん、おうちの方はよろしいんですか?」 A「かまへん。かまへん。あんなもんかめへんがな。」 B「なんか岡田さんに励まされて私、元気が出てきました。」 A「和田ちゃ〜ん。思わへんか? ワシらは仕事。周りは遊び。世の中不公平にできとるもんや。」 B「そうですね…。私もパァーッと遊びたいなぁ…」 A「………。和田ちゃん。ここだけの話やけどな。今週締め日やったやろ? もう連日残業やったやないか。おかげでワシのココ、もうパンパンや。」 B「やだー。岡田さん。変な話突然しないでくださいよー。」 A「だからここだけの話って言うてるやないか。なぁ、和田ちゃん。毎日ツラい事ばっかりやないか。ワシもそうやし、和田ちゃんもそう。」 B「…。」 A「会議終わったらホテル行かへんか?」 B「チ、チョット何言ってるんですか。岡田さん奥さんも子供さんもいらっしゃるじゃないですか。」 A「そんなもんとうに終ってる夫婦や。なっ。和田ちゃん。ワシもう爆発しそうや。」 B「お、岡田さんチョット待ってくださいよ。携帯で奥さんに連絡しちゃいますよ。」 A「今家にかけたって家おらへんがな。アイツも影で何やってるかわからへんで。」 B「…。」 A「なっ。エエやないか。ワシ後腐れないで。」 B「でも私手持ちがそんなにないし…」 A「金の心配ならなんにもいらん事を先に言うとくわ。」 B「…」 A「和田ちゃんはなんでそう自信なさそうな顔ばっかりするんや。悔しいないんか? 多田の顔思いだしてみ? 柿林の電話思いだしてみ?」 B「岡田さん…」 A「わかっちょる。わかっちょる。ワシが一番ようわかっちょる。」 B「でも私… やっぱり不倫とか抵抗あるし…」 A「そないに大げさに考えんでもエエがな。お互いエエ汗かいたらエエだけの話や。じゃあこうしよう。一回こっきりのアバンチュールにしとこう?」 B「中華は?…」 A「もちろん中華も行くがな。その後でエエがな。」 B「…。」 A「頼むわ。一発だけ。一発だけ頼むわ。」 B「今日の会議…。早く終るといいですね…。」 ※
※多少の脚色はありますが、大筋はこんなもんです。 (99.5.22) |
完
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