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何か勘違いしている人々の脳の中
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ケース1 超ド級財閥会長 金は余りまくりヒマな余生を無駄に過ごす80歳の老人の場合 ※ いやいや。わざわざ御苦労。おお…おいおい。なにをそんな所でつっ立っておる。 こっちに来て掛けなさい。 楽にしたらいい。今日は歴代社長の中での最年少記録を出した栗林君の就任祝いでもあるのだ。リラックスしたらいい。それにしてもなんだな。君は中々のヤリ手だな。その若さで社長まで登りつめるとはな。 いくつになる。…ホウ。37か。一番油の乗った歳だな。 せいぜいワシを失望させんでくれよ。 そうだ。今朝話した通りだ。今年度の予算は前年比120%必達じゃ。君は知らんかったのか。予定に変更はない。 ん?… なに? 引き継ぎの件? あぁ、あの前任者の話題はワシの前では出さんでくれ。 たかだか114%の成績しか達成することができず、少しワシが詰め寄っただけで首を縊りおった前任者の話など。 あの時は遺書に真心がどうのこうのと女々しい文章を書き残しおって、散々我が社もマスコミに叩かれたわい。それを揉み消すのにどれだけ金を使ったことか。 まぁ、その後奴の肉親、兄弟、親類、親友にはそれなりの報復措置をとらせてもらったから、少しはワシの怒りもおさまったんじゃがな。 失業者に上手い具合と紛れて、不景気風に拍車がかかったかの。ははは。 これから死ぬというのに遺書にはツマランことを書くなということじゃな。 がはは。 ん? どうした? 暑いか? そんなことはなかろう。汗をかいておるではないか。今クーラーをいれる。 今、愚妻がツマミを作っておるから待て。何? お若いですね? うむ…。まぁそうじゃな。26歳じゃからな。がはは。…愛などあるわけなかろう。倒産寸前の銀行の会長の孫娘じゃ。いろいろの交換条件にの。 式は身内だけでひっそりと挙げたわい。愚妻の父親が式中、これ以上はないというくらい泣きおっての。なかなか感動的な式になったわい。 あぁやって台所に向かって料理しておるように見えるがの。奴はちゃっかりこっちの話を盗み聞きするような愚かな女じゃ。 それにしてもなんじゃな。歳をとるとな。そういう気持ちはあるのじゃが身体がの。だからその辺を補うように口ばかり卑猥になっていくのじゃがの。 それで今日呼びつけたのは他でもない。元来日本には「もてなし」という文化があるのは知っておろうの。 しかし平成の世のもてなしとは、うだつの上がらぬ上司が県住に部下を呼びつけて、ビールだけを出し 「気楽にしたらいい」 といった具合のものではないかの。それを「もてなし」と呼んでいいものか? ならワシの「もてなし」とはなにか。考えたのじゃ。 オウ、やっとビールが来よったわい。段取りの悪い女じゃ。 それで話の続きじゃがの。ワシくらいになると客を呼びつけておいてビールだけ出す。というのも芸がなかろうて。それに加え、驚かせたり体験したことのない衝撃を与えるくらいのもてなしをせぬと財閥の名折になるような気がしての。この歳になって先代に申し訳ないような気がしての。 それでそこにあるそれじゃ。 そうそう。グラスの横に初めから置いてあるソレじゃ。そうじゃ、そう。そのピンク色のリモコンじゃ。 栗林。何を顔を赤らめておる。だから栗林。固くなるなといっておろうが。 別のところも固くなったかの? がはははは。 そうじゃ。そうじゃ。ボタンはひとつしかないではないか。押してみろ。 ははは。まぁよい。そう。まず一息ついて… おおーっ、いい飲みっぷりじゃ。酒は強い方か? そうか。 見てみろ、一応エプロンなどして知らぬフリでキュウリを切っておるわ。しかし全部聴いておるのじゃ。 がははは。 準備はできたか? よし。それじゃあその先端を台所の方へ向けてみよ。まだ何食わぬ顔でまだキュウリを切っておるわ。ん? 何を困った顔をしておる。栗林。ためらう事はない。ワシが見たいからそれでいいのじゃ。 ほれ。思い切り手を伸ばしてリモコンを台所に向けて押してみよ。そうそう。せーの、それっ。 …。 よがりおるわ。よがりおるわ。 ホレホレ、もっとしっかりキュウリを切らんか。 がはははは。 栗林。いつまでボタンを押し続けておる。いいかげんにせんか。そうそう。ダラダラやっても面白くないのじゃ。物ごとには「押して・引いて」が肝要じゃ。これは経営にもいえるからの。はははは。 だいぶリラックスしてきたようじゃの。オウオウ。いい飲みっぷりじゃ。イヤイヤ、気にすることはない。呑め呑め。なかなかないぞ。ワシの酌は。 別のしゃくはできんがの…。 がはははは。 ホレホレ。台所を見てみよ。ようやくキュウリが切れたようじゃ。まったく手の遅い女じゃ。もうすぐこっちへ持ってくるぞ。よいか。もってくる最中に栗林。ためらわず押せ。 かまわん。かまわん。こんな安物カーペット。仕入れ業者が披露宴に来ておって格安で仕入れさしたんじゃ。それでもサラリーマンの年収くらいはイクがの。はははは。 持ってきよるぞ。持ってきよるぞ。知らぬ顔で持ってきよるわ。タイミングはもうわかっておろうな。栗林。そう。それでこそ全権を任せた男じゃ。なるべく手前での。 …。 こぼしよったわ。こぼしよったわ。 ホレホレ、もっとしっかり拾わんか。 がはははは。 いやぁ、美味い酒じゃ。美味い酒じゃ。こんな楽しい夜は久しぶりじゃ。結婚披露宴以来じゃ。いひひ。ところでのう、栗林。 これで120%いかねばウソよのう。 がははは。 ケース2 ベストセラー作家を夢見る妄想系の浪人生の場合 ※ だからなるんだって。僕は。ベストセラー作家に決まってるじゃない。だって小学校の時からよかったよ。作文は。 最高、悪くて2 文章褒められたことも何回もあるよ。だから僕はどんどん本を読んでじゃんじゃん作文を書いてばんばん褒められてぐんぐん上達してずんずんベストセラー作家に近づいてバリバリ儲けようと思うんだ。 だって今世の中不景気だろ? 普通に就職してもダメなんだ。そうさ。そうだよ。君知らなかったの? あえて僕は就職してないの。 普通のスーツ着て、悪いこと一切してませんよーみたいな顔して面接したって無駄な努力なの。結局そういう没個性な人間は落ちるんだから。今からは才能の時代よ。才能。 おばあちゃんが今年パソコンを買ってくれたんだ。それでインターネットをやってるんだけど、知ってる? 簡単じゃん。インターネットで書いてる人でも雑誌に載れるんだ。「イラスト書いてもらってサイコー」って得意げに日記書いてるバカもいるしさ。 だから僕にもなれるんだよ。プロっていっても元手はかからないしさ。パソコンはもうおばあちゃんが買ってくれてるから、あとは構想を纏めればイイだけの話なんだ。 おばあちゃんには心から感謝しているんだ。知ってるよね? 僕がおばあちゃんっ子だってこと。作文も一番におばあちゃんが褒めてくれるんだ。僕はおばあちゃんが大好きなんだ。 だから例えばおばあちゃんがアイツを殺れって言ったら僕は必ずするよ。 いやいや。それぐらい好きだってことさ。なんだよ、離れるなよ。何疑いの目で…、あっ、いっとくけどあの角の薬局の無愛想なジジィの通り魔殺人事件は僕じゃないからね。 だって警察も「衝動的な犯行」ってケリがついて迷宮入りじゃん。きっと黒い服をきた20歳くらいの男はもうどっか遠くに行っちゃったよ。でも絶対僕じゃないからね。 おばあちゃんは「殺れ」って言ったけどね。 おばあちゃんは保険の勧誘のプロだからさ。尊敬しているんだ。あのジジィが死んだ後、すぐパソコンを買ってくれたんだぁ。僕はおばあちゃんが大好きなんだ。 えっ? 知ってる? 僕の小説読んだことあんの? あっ、あれ? あの学生時代に月イチ発行してた同人誌。君買ってくれてたの? よくあんなマイナーな学園誌買ってたね。 こっちがビックリするよ。えっ? まぁまぁ面白い話は少なくて全然面白くない話の回の方が多かった? ち、ちょっと待ってよ。違うんだよ。違う。僕はあの頃受験で忙しかったんだ。結局浪人だけどね。君だけにその時の真実を話すよ。 作家を目指す僕の汚点を人に知られたくないんだけど、あの時の学園誌の評価で更に汚名を重ねたくないから思い切って言うよ。 だから君も僕がすごい小説家だって事、考えを変えないでくれよ。 まぁまぁ面白い話の回、あれは全部僕が書いて、全然面白くない回は 僕の影武者なんだよね。 だからホント面白くなくって当然さ。これで真相がわかっただろ? 受験で忙しかっただけなんだ。じゃあそろそろ僕は帰ってバリバリ小説を書くよ。影武者の話でバリバリ書いてた時を思いだしたよ。 君も就職大変だけど頑張ってよ。でもその個性のないスーツじゃダメだと思うな。ジーパンで面接行ってみなよ。 まぁいろいろお互いこれから大変だけど本が売れたら一杯おごるよ。 で、その時の投資ってことで今晩おごりでってのはどう? (99.7.31) |
完
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