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骨の折れる女
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茂「せやから、何ベンもいうてるやんか。あの娘はどないにキバッたって絶対に落ちひんねんて。」 マサヤ「そんなことないと思うな。いわせてもらうけど、この前のテスト俺一位だったしさ。で、先月の陸上大会でもアンカーやって優勝だしね。「夢中」とまではいかないけど「注目」はしてくれてると思うんだよね。」 茂「まぁ、そうかもしれません。そらぁマサヤが東京の学校から転校してくるまではワシがバレンタイン一番でしたわ。えぇ思いもさせてもろてましたわ。でも今年は完全に完敗の全滅ですわ。」 マサヤ「で、どういう娘なの? そんなに気難しい娘なの?」 茂「気難しいも、気難しくもないのちうてな。」 マサヤ「言ってることがよくわかんないんだけどさ。要するに茂はフラれたって訳だね。」 茂「そんなもんフラれる以前の問題やがな。なんかこう何考えてるかわからへんちうか…。」 マサヤ「じっくり観察したことないからわからないけどさ。たしかテストの点数いつも悪かったよね。でも俺、あれってワザとだと思うんだよね。目を見てるとね、世の中に反抗してるっていうか、虚無的っていうか…。なんせ普通のバカ女でないことだけは確かだね。」 茂「元学園ナンバーワンのワシでも、全然あきまへんでしたわ。住んでる世界が違ういうかな、マサヤでも絶対に無理。バカボンのパパの好物は絶対に「レバニラ炒め」のようにな。」 マサヤ「茂るの喩えはいつもなんかヘンだけどさ。まっいいよ。今日声かけてみるよ。」 茂「ええーっ。今からいくんけ。」 マサヤ「まだ女子クラにいるんだろ? いつも夕陽見て、ボーッとしてるんだったよね?」 茂「やめといた方がエエで。プライドに傷がつきまっせのヘルマンヘッセ。」 マサヤ「韻を踏んだんだね。でもあんまり面白くないな。茂の韻は。ドラゴンアッシュのCD貸してやるから勉強しなよ。」 茂「もうええがな。そこで「なんでやねん」って返さな関西では生きていけまへんで。」 マサヤ「ほーら。まだいたいた。一番後ろの席でさ。毎日何を思いに耽ってるんだろうね。」 茂「フラれたからやないけど、あの娘なんか近寄りがたいオーラがやっぱ出てるで。」 マサヤ「そんなことないと思うな。夕陽の色が髪の毛をオレンジに染めてさ。多分、文学少女なんじゃないかな? あの娘を見てるとC-C-Bの「スクールガール」を思い出すよ。」 茂「オマエ何歳やねん。」 マサヤ「まぁじっくり俺のお手並みを見てな。行くぞ。」 マサヤ「…。やぁ。一体どうしちゃったの? 夕陽なんかボーッと見てさ。でも思わない? 夕焼けってよく見ると毎日表情が違うよね。なんか不思…。」 麻美「最低。」 マサヤ「…。」 麻美「…。」 マサヤ「…茂。オマエの時もこんな感じだったのか?」 茂「そうそう。取りつく島もあれしまへん。目ェもあわしてくれはりまへん。」 マサヤ「…そっか。…。あのさ、自然っていいよね。海とか山とかさ。俺、山登りとかよくするんだけど、渓谷の小川でサワガニがさぁ…。」 麻美「最低。」 マサヤ「…。」 麻美「…。」 マサヤ「…。俺もボーッとしたい時はよく夕陽とか見るよ。夜はヘッドフォンで音楽だな。最近はドラゴンアッシュとか、まぁ聴くのはほとんどラップ系なんだけど…、」 麻美「最低。」 マサヤ「…。」 麻美「…。」 マサヤ「…。でもなんだよね。休みの日はやっぱ文学読んじゃうよね。おかしいけどさ。最近、坂口安吾を引っぱり出してさぁ、破天荒な青春時代の…。」 麻美「最低。」 マサヤ「…。」 麻美「…。」 マサヤ「…。で、兄貴がさ、バイク買い替えるっていうんだ。それで俺にお古がまわってくるんだけど、来月卒業じゃん。ちょうどメットも二つあるしさ、アメリカンバイクのチョッパー…。」 麻美「最低。」 マサヤ「…。」 麻美「…。」 茂「マサヤ。もうやめといた方がエエんとちゃうの?」 マサヤ「なにいうてるねん。前の学校で「ボキャ天のマサちゃん」っていわれとったんやで。」 茂「どうでもエエけど、関西弁が乗り移ってるで。」 マサヤ「…。これとっておき。オヤジの会社の関係でさ、バイオハザード3のサンプルロムがどういう訳かウチにあってさぁ。もうやり放題の…。」 麻美「最低。」 マサヤ「…。」 麻美「…。」 茂「マサヤ。俺、もうこれ以上見てられへん。」 マサヤ「…………。明日さぁ。バイト代が入るんだよね。よかったら一緒にヴィトンのバックでも見に行かない?」 麻美「最高!」 茂「なんでやねん!」 マサヤ「よかったら今晩デートでもどう?」 麻美「アタシ、マサヤの横なら安心して眠れそうな気がする…。」 茂「どういうこっちゃねん!!」 マサヤ「茂…。なっ。」 茂「マサヤも「なっ」と違うがな。要するに金出してソープ行くんと一緒やんけ。っておいワシ置いて行ってまうんかい。日も暮れてよう見たら、夕陽のオレンジやのうて、染めてるオレンジなんが気がつけへんのんか? そこらへんのバカ女と、もしかして一緒ちゃうんか? 聞こえてるんか、おーい。」 体育の先生「いつまで残っとるんじゃーい。」 茂「違うがな。先生、違うがな。マサヤと麻美がいつまでもダラダラダラダラ喋りよるさかいこないに遅うなってもうてからに…。」 体育の先生「いつまで残っとるんじゃーい。」 茂「だから違ういうてるやんか。ワシはただ後ろで見とっただけの…。」 体育の先生「まだ残りたいんかーい。」 茂「って先生。先生の理論いつもメチャメチャやがな。それにその物騒な竹刀はやめてぇな。」 体育の先生「グランド十周!」 茂「なんでグランド十周もせなアカンねん。イテッ。なんでワシだけケツバットやねん。わぁーやめてやめて。そないに押したら階段落ちるがな。だいたい理屈がわかれへん。なんで、どないな理由で十周やねん。」 体育の先生「グランド二十周!」 茂「余計わかれへん。ってオイコラー。おまえらー。何肩組んで仲良しで帰りよるねん。先生ーっ。こいつらも遅いですよー。人のことをチクるな? なんでこんな時は先生マトモやねん。なんでワシだけケツバットやねん。これでおうてるんかー? これで世の中おうてるんかー?」 体育の先生「終わらないつまでも帰れへんどー。」 (99.9.11) |
完
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