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相談
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人間を30年もやっているとそれなりの経験を積み、人生の酸いも甘いもなんとなく理解して、夢の上限を設定して悲観してみたり、思い通りになるハズもない世の中に諦めきったり「若き日の情熱はいずこへ」などと自分にゲキを飛ばしてみても、結局は毎朝変わらぬ出勤に日々流されてしまっているものだ。 角がとれて丸みをおびた分、迷える若き小羊に手を差し伸べられる余裕が出てくるのも三十路ならでは。 ※ 昼休み、暗い顔をして落ち込んでいる新人が、ひとりポツンと座っていた。お昼を食べる様子もない。仮にこの新人女の子を「フッチー」としておこう。フッチーは一点をみつめてピクリとも動かない。目の下にクマもできている。 部屋には私とフッチーしかいなかった。他は昼食に出払っていた。 呉「どうしたフッチー。そんな暗い顔をして。」 フッチー「…。はぁ…。」 呉「はぁ…、って、死にそうな声だして。どうした?」 フッチー「私…、寝ていないんです。」 呉「…、悩み事か?」 フッチー「…。」 呉「男の悩みとか?」 その瞬間フッチーの肩は一瞬ピクッと揺れた。おお。わかるぞ。わかる。若き日には感じ取れなかった相手の心の動きが。私は若さを失ったかわりに成熟を手に入れた。「三十路フォース」だ。いろいろな経験や体験が瞬時に頭の中を駆け巡る。まるでプログラムされたかのように今のフッチーの状態から原因を導きだせるぞ。 呉「ところでフッチー。フッチーはここに来てどれくらいだ?」 フッチー「もうすぐ一ヶ月です。」 呉「なんでも相談してみろ。親身になって聞いてやるから。」 フッチー「…。呉さんはいつもパワフルでいいですね。」 呉「おう。50万アクセスとか掲示板とか、プライベートはみなぎりまくりだ。」 フッチー「な、なんの話ですか?」 呉「い、いや、私生活は充実してるって話だ。」 呉エイジの素顔を知る人間は10人もいない。 呉「で、フッチー。昨日の夜一睡も出来なかった訳っていうのは一体なんなんだ?」 フッチー「…。べ、別に大したことないんでいいです。」 呉「大したこともなくて眠れない訳はないやろ?」 フッチー「…。」 呉「じゃあ俺が推理してみようか? まぁこんなところだろうな。仕事について一ヶ月。今までの気楽なバイトとは違い責任もあって厳しい毎日。精神的に日々クタクタだ。当然週末は疲れる。疲れて爆睡。」 フッチー「(笑)。」 呉「で、彼氏なんかがおった場合、発生する揉め事のケースは? といえばこれしかないやろう。「最近、オマエ休みの日に全然会ってくれへんやないか」ちゅうことやな。」 フッチー「(笑)。」 呉「ほんでホンマに疲れて眠ってもた場合、彼氏は「どっか遊びに行きよるんと違うか?」思うて疑心暗鬼の毎日や。それでフッチーは疲れてるから、たまに出る電話の返事もそっけないときとる。」 フッチー「(笑)。」 呉「ようある話や、ようある話なんや。」(力説) フッチー「そうなんですか?」 呉「そうや。社会人になったらだいたい経験しよるケースや。そら学生気分のまんまで社会人は勤まらん。俺の経験談を教えてやろうか? ウチは俺が土下座して結婚したんや。だから今でも俺の立場は相当弱いんやけどな。」 フッチー「(笑)。」 呉「ほんで会社ごとに忙しい月ちゅうもんはあるわな? そういう時にさっきみたいなケースが発生するんや。たとえばやな…、 呉「オマエ最近疲れた疲れたいうて全然休み会わへんやないか。なんでや。」 嫁「なんでや、いうたかて一週間メッチャしんどいのに日曜日に休んどかな次の週もたへんやないの。」 呉「俺はオマエにメッチャ会いたいぞ。オマエは俺に会いたくないんか?」 嫁「そら会いたいけどもやな。今仕事が一年で一番シンドイ時なんや。それさえ乗りきればいつでも会えるんや。今は充分休みとっとかなアカンねん。」 呉「言わしてもろうたらやな。俺は疲れた時に彼女に会うたら元気が湧いてくるもんやけどな。」 嫁「疲れた時に彼女を休ませるのも男の優しさやと私は思うけどもな…。」 フッチー「く、呉さん、あのぅ、私の場合、相手がバツイチなんですよ…、それで実はね…。」 呉「まぁ黙って聞いとけ で、さっきの続きや。それでお互いのイライラがだんだんとエスカレートしてきてやな、 呉「疲れた疲れたいうて、オマエ。ホンマは男できたんと違うか?」とか聞いたりしてな、ほんなら嫁も 嫁「アンタ何いうてるんよ。こんだけ残業してどこに浮気する時間があるっちゅうねん。ええかげんにせんと私もキレるで。」みたいな展開になるわな。そうしたらそうしたで俺も、 呉「怪しい。なんか怪しい。オマエ絶対に他に男できてるわ。去年はこの月もずっと会うてたやないか。」みたいに勘繰ったりしてな、そういう見方されたら女もそら怒こりよるわな、 嫁「そら今年は去年と違うてお互いが安心できる仲になって、ほっといても大丈夫にまでなったからやろ。違うんか?」みたいな、取り方によったら嬉しい返事してきよってな。別にノロけてる訳やないで。」 フッチー「で、私の相手…、32歳なんですよぅ、とらえどころがないっていうか…。」 呉「まぁ最後まで聞け で、さっきの続きや。俺は日曜日一日ヒマや。でも嫁は疲れて眠りたい。 呉「いくら疲れても一日眠る訳やないやろう。そんなにシンドイんやったら病院行かなアカンのと違うか?」とかオーバーに皮肉る訳や、そうしたら 嫁「アンタもしつこいなぁ。昨日11時まで残業やったんやで、朝の8時に電話してこんでも私ちゃんと家おるがな。」もうこうなったら意地でも会いたいもんや、 呉「好きな人に会えるんやったら疲れなんか吹き飛ぶ思うけどな」 嫁「アンタ会いたい会いたいいうて私の疲れてることなんか考えもせんと、好きやったら休ませてあげるのもホンマの愛情と違うんか?」嫁も意地でも会わへんつもりや、もうお互いケンカ腰や、 呉「いいや。オマエの恋愛は手抜きじゃ。」 嫁「私が疲れとるいうのにホンマにアンタは。ヤルだけか?」 呉「そんなんいうたかて俺かて一人でどないしたらええんじゃ!」 フッチー「あのう、呉さん!」 呉「へ?!」 フッチー「呉さん相談に乗るっていって結局自分の事ベラベラ喋るばっかりで私の悩みを全然聞いてくれないから私、別の人に相談します。」 ※ B型人間それは… 他人の事を心配してお節介を焼きたがるも、結局は自分の話に展開してしまう自分主体の悲しい性…。 恐るべし! B型&三十路パワー!! (99.10.30) |
完
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