祝!講談社”江戸川乱歩全集”パーフェクト 1999.1
| 日本ミステリーの開祖、江戸川乱歩。彼が世に出なければ果たして日本にこれだけミステリーが普及したであろうか?初期の傑作短編群、大衆にアピールし探偵小説を世に広めた通俗活劇長編、現代のミステリー作家に探偵小説家のエキスを注ぎ込んだ、少年探偵団・怪人二十面相などの少年物、そうして探偵小説の啓蒙のための幅広い評論活動・新人育成。まさに巨人である。 |
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「何か面白い本ない?」私はあまり小説を読まない人にこう聞かれた時には、江戸川乱歩を薦めている。読んだ事がある人も思いだしてほしい。あのきらめく初期傑作短編。一遍読んだだけで「他の作家と違う!」と、たちまち気付くことであろう。屋根裏に忍び込んで、節穴から毒を垂らして人を殺す話や、偶然の可能性の犯罪を語り合うクラブの話など、どれをとっても面白い。そうして文体が素晴らしい。この辺は探偵小説の巨匠、横溝正史の届かない所だ。(横溝が悪文という意味ではない) |
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| 作品を読み進めばわかることだが、乱歩の作品は一遍ごとに頭の禿げ上がるようなアイデアが、惜しげもなく使われている。後年、禿げたが(笑)。ある程度作品を読んだ読者の次に向かうべき所は、乱歩の遺した驚くべき数の自作に対しての文章であろう。時に楽屋ばなしとして語られるその文章は、作品を創造したキッカケ、生みの苦しみ、当時の作者の背景、発表後の世間の反響など、あらゆる事が語られる。今でいう”読本”を乱歩は自分自身でやっていたのだ。ナルシストとまでは言わないが、強度の”自分ヲタク”である。しかし読む側である読者は乱歩の初期短編を充分楽しんだ後に読む訳で、年代ごとに進む思い出話は、まさしくバーチャル江戸川乱歩。しだいに世に認められ、名が上がり、プレッシャーに悩みスランプに陥る作家のシュミレーションを味わえてしまう。そうして乱歩のちょっとした思いつきや、アイデアの発想法を見て「俺でも何かやれるんじゃないか?」と錯覚させてしまう恐ろしさもある。(私がそうだ(笑) |
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| 江戸川乱歩は初期短編に限る。乱歩のネチっこい中毒性のある文体を知った後で甲賀三郎を読むのはツライ(笑)。乱歩は同時代の探偵小説家と比べても”別格”であった。そうして少年物から通も首肯く評論まで幅広い業績を残した。私は”初めて小説を読む”という人に、自信を持って江戸川乱歩を薦められる。一生出会わないでおくには勿体ない作家だ。 |
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そうして講談社の江戸川乱歩全集(全65巻+別巻1)である。短編・長編・少年物・エッセイなど、主要なものは全て収められた画期的な文庫の全集だ。1987年の9月から、1989年の5月まで毎月3〜5冊づつ刊行された。当時高校生だった私は、毎月ヒーヒーいいながら買い集めたものであった。今回最後の一冊、探偵小説40年の2巻をネット上で知りあった方が神田で見つけてくださって1〜4巻セット、初版・オビ付を9000円で入手する事に成功した。当時、小遣いがなく、その2巻だけを買わずにいたら、いつの間にか書店から姿を消した。あれは早かった。同じ探偵小説作家の横溝正史(角川文庫)がいつまでも書店にあった安心感が、買い控えをさせてしまったのだ。 |
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| 苦節十年である。 最後の一冊を本棚に入れる時はさすがに手が震えた。これで完璧に揃った。乱歩をある程度極めたいなら、この全集の他に河出文庫の評論集シリーズ六冊+別冊になる雑誌コラムを作家別に編纂した「探偵小説辞典」と春陽文庫の合作探偵小説シリーズ全六冊と、同時代の探偵作家、小酒井不木らとの同人活動シリーズ、耽綺社同人シリーズ三冊を揃えれば、ほぼ乱歩の業績を手中に収めることができるハズである。まぁ私は全て初版オビ付で持っているがね(笑)。 |
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| 全集コンプリートの達成を自慢するのは余りにいやらしい。この文章を書き続ける動機を乱歩の業績紹介。という風に読者の目をそらしたいのであるが、これはやはり自慢したページでも自分的に全然オッケーであろう(笑)。この講談社版乱歩全集はほとんど古書店にも出回らない、入ってもすぐに売れてしまう人気シリーズである。現代ミステリー作家でも欲しがる人が多いと聞く。ちなみに65冊の現在の価格はセットで14万円。別冊の”はりまぜ年譜”は一冊2万円の値がつけられている。文庫一冊でも、初版オビ付なら2500〜3000円が相場。今、ゼロからスタートするのは非常に困難なシリーズである。装丁は金色で毎回、天野喜孝が担当した。今まで目にしてきた中で一番美しい装丁であった。オビの謎についてであるが、このシリーズは大人向けの小説は青いオビ、少年物は赤いオビ、評論集は緑色のオビで統一されていたのだが、一冊だけ”吸血鬼”だけが大人物であるのにオビは赤であった。これは編集部のミスであろう。最後に少しだけ文庫の解説をして終りたいと思う。 |
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このあたりの人気短編シリーズは比較的タマ数が多いので郊外型の古本屋でもまれに見かけることがある。 |
意外と盲点だった少年物。少年物だと軽く思って買いのがしている読者は多いことだろうと思う。 「電人M」とか(笑)。 |
このあたりのマイナーな評論集は古本屋で見つけるのは絶望的(笑)当時買わなかったことを後悔する事しきりであろう。 |
完