よくやった春陽文庫!!

 

私が楽しみにしていた春陽文庫の”名作再刊シリーズ”が終わってしまった。

解説者に私の救世主 山前譲氏を迎え、始めは快調な刊行スピードと狂喜乱舞の続刊案内にしびれていたわけであるが、さすがに現代では昭和初期の作家のリバイバルでは採算がとれなかったのであろうか。

まことに残念である。

今回、最後の刊行となってしまった3冊

 ◆木々高太郎 著「網膜脈視症」

 ◆江戸川乱歩 著「蠢く触手」

 ◆乱歩・横溝 共著「覆面の佳人」

木々はともかく残りの2冊の選択眼は「さすが山前氏!」と喝采を送りたくなるラインナップであった。

しかし今回この3冊を探すのに相当苦労した。

姫路で1番大きな書店で発売日にないのである。

店員に聞くと「朝一番に売れた」と一言。

「新刊なのに1冊づつしか仕入れないの?」

と驚かずにはいられなかった。しかし、春陽文庫は弱いのである。郊外型の一般書店では、まずない。

春陽文庫のコーナーすらない。このまま放っておけばすぐに絶版になってしまう危機感から私は思いきって神戸にまで足をのばした。

 

 

  

(新刊なのに、すでにレア本の3冊。めでたく入手(笑)。

 

当日、インターネットの検索エンジン、インフォシークやインフォナビでキーワード”春陽”で検索をかけたところ、今回の配本に言及されている文章は見当たらなかった。

これは、インターネットをやっている人で昭和初期作品を愛好する人が少ないのか、それとも全国区的にこの種の作品愛好家が少ないのか気になるところではあるが、この、小説が売れない時代において、あえて未刊行作品を出版する春陽文庫と山前譲氏の採算を度外視したとしか思えない英断は特筆に値することであると信じる。

このコーナーは本ホームページにおいても非常にマイナーなコーナーである。

以下に昭和初期作品愛好家の私の弟との対談を載せるが、わからない人にはさっぱりわからない内容であると思う。

エンターティメント性を重視する私にとって、客観的な編集長の立場である私はためらうところもあるが山前氏の功績をたたえるホームページが現在ない今。

それをやるのは私しかいない。

という使命感からあえてこのコーナーをアップした次第である。

 


対談「残念だが、がんばったよ春陽堂」

 

呉「終わったねぇ。」

弟「やっぱ、無理があったかなぁ。最後の3冊の刊行予定日は7月だったもんな。」

呉「でも、もう今は10月。春陽さん苦しかったのかなぁ。」

弟「特に今回の3冊は、本から覇気が感じられないもんね(笑)。」

呉「装丁は全冊紫色だし…(笑)。前は各作家で色を変えていたのにね。」

弟「高くつくから全部同じ刷り色でいい!出せたらいい!みたいな状況?(笑)」

呉「山前さんの活躍はありがたいね。」

弟「今度、角川エンターティメントから幻影城のアンソロジー出たでしょ。あれの2巻目はやはり新青年時代作品の発掘だもんね。」

呉「1巻目はおとりだよね。出版社を納得させる為の。山前さんの真意は2巻目にある。(笑)」

弟「昔、幻影城の島崎さんが経営難かなにかで国外行っちゃったでしょ。探偵小説に手を染めると会社潰れちゃうんだもんなー。そこんところ山前さんはエライよね。評論家であって出版はしない。同じ過ちは繰り返さない。」

呉「探偵小説界ではいいことをやってくれてるんだけどね。でも春陽さんがなんとなく風前のともしび(笑)」

弟「たしか光文社カッパノベルズからもアンソロジー出てたよね。」

呉「あぁ。もう買ったよ。これだろ。」

 

 

     

 

呉「これにも山前さん。いっちょ噛んでるんだよね。(笑)」

弟「やってくれるなぁ。でいい作品入ってた?」

呉「俺は”宝石”世代はフィールド外だから、1巻目はやっぱり大下宇陀児と森下雨村だよね。」

弟「2巻目は?」

呉「海野十三と角田喜久雄。これに尽きるね。」

弟「もうアンソロジーでしか発掘は無理そうなのが見て取れるね。」

呉「その点春陽さんはやっぱりがんばったよ。作家一人に一冊の配本だもの。」

弟「松本泰の作品なんか現代でどこまで売れるんだろうね。こっちはありがたいけれど。」

呉「多分惨敗だと思うよ。解説であるんだけどね。〜松本作品の再評価はこれからである。〜って多分もう他の作品読めないんじゃないか?って。(笑)」

弟「再評価もなにもないよね。作品が読めないんだから。」

呉「だから乱歩の評論集なんか罪だよね。いたるところに読みたい作品のタイトルが列挙されてて」

弟「でも今では乱歩の評論集すら売ってないんじゃないの?」

呉「えっ、そうだったっけ?創元推理は?」

弟「あれは作品シリーズで探偵小説40年とかはないよ。」

呉「悲しい現状だなぁ。今回の3冊も乱歩・横溝の名前で引っ張ってたけど苦しいんだろうなぁ。」

弟「どっか出してくれないかなぁ…。西尾正全集…。」

呉「まず無理だろうな(笑)。でも売り方によっては充分食い込んでいける作品もあるのになぁ。例えば甲賀三郎の”体温計殺人事件”とか浜尾四郎の”鉄鎖殺人事件”とかさぁ。新本格っぽくっていいタイトルだろ。あえてレトロな装丁にせず、今風にやれば、西村京太郎の横に置いても遜色ないと思うんだけどなぁ。」

弟「”蠢く触手”は地味だよねぇ。(笑)まぁそれが変格っぽくていいんだけれど。」

呉「俺がもし宝くじ当たったら絶対甲賀三郎全集出版するよ。」

弟「兄ちゃんそればっか(笑)。版権を買って?」

呉「そうそう。で、インターネットで受注販売するの。いっそ電子本でもいいなぁ。それならテキスト打ち込むだけでリスク少ないし。消費者はパスワードを買って春陽ホームページで作品をダウンロードするの。短編1篇が500円とかで。」

弟「そういうのいいねぇ。絶版がないし。」

呉「専用のブラウザー無料配付して、買った作品は本棚の本の色が変わっていくの。依頼があったら、俺タダでつくるよ。ホームページ。残りの半生かけてもいい。」

弟「きっと島崎さんみたいに家潰すよ(笑)」

呉「だろうなぁ。甲賀三郎全集全20巻!解説は山前譲!!」

弟「で、次回配本は?」

呉「”馬場胡蝶”評論集とかどうだ。」

弟「(爆笑)だれが今どきそんなもん買うの!!売れないって。」

呉「巻末に”馬場胡蝶”全講演目録を付す。とか。(笑)」

弟「無謀すぎるよ。借金地獄だって。」

呉「やっぱり、山前さんや、新保さん、鮎川さんにもっとがんばって発掘してもらいたいねぇ。」

弟「中島河太郎は?」

呉「事務的な解説がいいねぇ。(笑)でも一体何歳なんだろう。そっちの方がミステリーだよね。」

弟「実はロボットとか。(二人笑)」