ある探偵小説ファンとの出会い
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「夢の鉄鎖殺人事件」 このホームページにおいて一番地味なコーナーがこの探偵小説のコーナーである。 しかし地味であっても購読者が少なくとも私は探偵小説を買うのも読むのも大好きだ。 ホームページをやっていると、まれにこんな地味なコーナーにでもメールが来る。 今回は98年4月の終りからゴールデンウィークあけまで続いた、ささやかな探偵小説捜しについてのメール交換をノスタルジック風味など織り交ぜながらエッセイにしてみた次第である。 ”Mr.Tからのメール” >>はじめてお便りします。gooで鉄鎖殺人事件で検索してたら >>このページを見つけました。確かに戦前の探偵小説を >>特集しているページは少ないですよね。 >>僕は甲賀三郎は読んだ事がありませんが、鉄鎖殺人事件 >>が読みたくって、古本屋を探し回ってます。 >>いやーないですね。これは。殺人鬼はあるんですけどね。 >>春陽文庫も本屋へ行けば必ず探してしまう。で、がっかりする。 >>これの繰り返し。これからもがんばってください。 >>ではこのへんで。 |
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嬉しいメールであった。鉄鎖殺人事件とは何なのか少し説明が必要だろう。 鉄鎖〜とは探偵小説家「浜尾四郎」の第二長編小説である。 書かれたのは今からざっと70年も昔。書き下ろしの長編であった。 浜尾四郎は弁護士や貴族院議員をやりながらのいわば余技作家だ。 しかし当時の探偵文壇を見渡せば変態心理や異常性格を扱った”変格”が主流であったことを思えば、浜尾作品は寡作であったにせよ探偵小説プロパーを目指し、また実践した数少ない作家であった。 現在では創元推理文庫や春陽文庫などで一部読むことが出来る。 浜尾四郎には鉄鎖〜の他に”殺人鬼””博士邸の怪事件”といった長編があるが、なぜかこの鉄鎖〜だけは長い間復刻されていない。 探偵小説ファンから見れば一番そそるタイトルでもある。 堂々とタイトルに”殺人事件”である。面白くないはずがない!と思いたい! |
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Tさんの鉄鎖〜を求める気持ちはよく理解できた。 私も10年間この鉄鎖殺人事件を古本屋で捜し求めて、ようやくゲット出来た経験があるからだ。 この鉄鎖〜だけはなかなか見つからなかった。 結局10年目にして、東京に出た折りその筋の古本屋に大枚をはたいて購入したのである。 そこで私はTさんに私の二の舞いにならぬよう、何年か前に訪れた岡山にあるミステリに強い良心的な古本屋”まんぽ堂”の道順をメールにて教えた。 |
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>>どうもTです。鉄鎖殺人事件に >>ついての情報ありがとうございます。 >>しかし春陽文庫の目録は本当に >>よだれがでそうなラインナップですよね。 >>ところで岡山のまんぽ堂って何処にあるんですか? >>話を聞いてると行きたくてうずうずしてきました。 >>未定になってるゴールデンウイークの嫁さんとの >>旅行先が決まってしまったような。(笑) >>できれば場所教えて下さい。 >>ではまた。 |
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岡山といえば隣県である。かの有名な名探偵、金田一耕助の生みの親、横溝正史の疎開先も岡山。金田一物の傑作の大半が書かれた土地だ。 また名作”八ツ墓村”のモデルとなった大事件、津山30人殺しの起った土地でもある。そうだ。近隣には探偵趣味的な土地がけっこうあったのだ。 車で15分くらいも走れば、その昔”竜野うどん屋8人殺し”で世間を騒がせた竜野がある!(なんちゅう事件のネーミング!)これは小説”小笛事件”で知った事件だ。 現在は創元推理の名作集1で読むことができるのだが、この作品は傑作だ。 ヘタなホラーよりよっぽど怖い。オープニングに事件の中心人物、小笛の庭先での首つり死体の現場写真が掲載されているのだが(犯罪実話)この写真だけでも、もうムチャクチャ怖い。白黒写真で! その日の夜は怖くてシャンプーが出来なかったくらいだ(笑)。 思わず脱線。 |
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>>こんばんはTです。 >>まんぽ堂の情報ありがとうございます。 >>さっそくGW岡山計画をたてます。 >>親父の田舎が岡山で結構 >>岡山に行ってる割にはぜんぜん >>知りませんでした。金田一耕助の >>ゆかりの地なんかは行ったりするのに、 >>古本屋を岡山でめぐると言うのは >>頭になかったなあ。 >>鉄鎖見つけたらまた連絡します。 |
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何年か前に訪れた折りは、戦前作家の作品が結構陳列してあったので多分鉄鎖殺人事件も手に入るであろうと予測して道順を教えたのだった。 古本との出会いも運命。さんざん捜しても見つからないくせに旅先でなにげなく入った小さな文庫専門のような古本屋でとんでもない破格値で手にできる時もある。 これだから古本さがしはやめられないのだ。 |
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>>こんばんはTです。 >>GWの岡山ツアーは5月3日4日で >>行く事になりました。 >>呉さんの要望の「探偵小説40年」の2も探してきます。 >>ところでこの本って相場はいくらぐらいですか? >>僕はあんまり古本の相場がわからないので >>教えてください。初版だと高いですよね? >>だいたいどのぐらいの値段までならゲットですか? >>連絡下さい。 |
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探偵小説の相場は本当にピンからキリまでだ。原則として大衆小説であるからシリーズものは欠けていることが多いし、その1冊だけがない!といった状態に陥りやすい。 そうなると”読むため”ではなく”本棚に収めるため”という動機の方が強くなってくる。 そういう欠けた本はやはり人気がなかったから当時も初版で終わってしまっていて、市場のタマ数が絶対的に少ないという事実に起因する。 これは私のもう一つの熱い趣味。ファミコンコレクトにも言えることで、”スーパーマリオ”の中古ソフトは楽勝で手にはいっても、 ”カケフ君のジャンプ天国” には、なかなかお目にかかれないのと同じことである。どちらも全部読んだりプレイしたりしないのになぜこうまで私はアリのように集めたがるのだろうか? なにか幼児期に強烈なトラウマでも背負ったか? |
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>>こんばんわTです。 >>今日、岡山に行くと親父に話したところ、 >>じゃあ金田一耕助記念館に行ってきたら、と >>言われました。そんなのできたんですかね? >>知ってますか?もし本当なら >>金田一ファンとしては一生の不覚です。(笑) >>是非行かねば。 >>で、この事を嫁さんに言ったら、ちょっとムッとしてましたけど。 >>しかし楽しみな岡山行きとなりそうです。 |
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Tさん。あなたもですか(泣)。私の妻は大の活字嫌いである。 一緒に旅行して古本屋に付き合わせると、10分ほどで完全に退屈し15分後には後方で仁王立ちである。 そんな状況で本の背表紙をゆっくり確認できるわけがない。 いつも泣く泣く本屋を後にするのである。 |
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>>こんばんはTです。 >>5月3日、4日で岡山に行ってきました。 >>万歩書店本店にて鉄鎖殺人事件を >>めでたくゲットいたしました。 >>ありがとうございました。 >>最初、本店に行って鉄鎖と探偵小説40年〜 >>を店員さんに聞いたところ文庫でその2つは >>非常に難しい、入っても1週間もしないうちに >>マニアが買っていってしまうとの事でした。 >>たしか探偵小説40年〜は初出は新青年でしたよね? >>と、店員さんに逆に聞かれてどぎまぎしてしまいました。 >>さすがに店員もただものではない。(笑) >>で、けっきょくそこに鉄鎖のハードカバーはあったのですが、 >>欲が出て東店まで文庫版を探しに行きました。 >>そこには結局文庫版もハードカバーもなくて、また >>本店に戻って鉄鎖〜の桃源社版ハードカバー初版を >>3000円にて買いました。(これって初版てなってました >>けどそれ以降、増刷されてるんでしょうか?) >>1000円の定価の本を中古で3000円で買うなんて >>気が知れないと、嫁さんにはボロクソに言われましたが、 >>満足しております。探偵小説40年〜見つけられなくて >>すいません。また古本屋、大阪の方でも行った時 >>探しときます。 >>ちょっと長くなったので、今日はこのへんで。 >>ではまた。 |
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Tさんは岡山で無事お宝をゲットできたようであった。 アドバイスした甲斐もあったというものだ。 買い物は個人の主観で通すべきだ。それに5000円の値がつきそれでも欲しいと思えば迷わず買うべきだし、その逆もしかりである。 Tさんが定価1000円の本を3000円出して買った気持ちが充分わかって嬉しくなってしまった。 長年さがしていた本との御対面の瞬間はいつもたまらない。 私が5.6年前に東京で買った”鉄鎖殺人事件”は、いつか読むために今も私の本棚に収まっている。 |