破滅への序曲〜悲壮マーチ〜




子供2人が寝静まったら、そこからは夫婦の時間である。

連日の更新に疲れを憶えていた私は、夜も急に冷え込んだこともあり、早々にマックをシステム終了すると、嫁の寝ている布団の横に潜り込んだ。

6畳間に4人”川の字”に寝る。娘の寝息が可愛らしい。

嫁「ありゃ?今日は早いやんか。」

呉「ああ。背筋がゾクゾクッときて…。早めに寝よかなと。」

嫁「そりゃエエこっちゃ。で、パパ?」

嫁はいきなりモゾモゾと私の布団に進入してきた。

呉「な、なんや!急に、気持ち悪い!!」

嫁「気持ち悪いって何よ!アンタに確認しとこうかと思ってな。」

呉「確認?なんの確認や?」

私はイヤな予感がしまくりであった。それは私の耳の中で虫達がオーケストラを奏でるような虫の知らせであった。

嫁「アンタ、30歳の誕生日でホームページ辞めるんやろ?」

ガガーン!(効果音)

呉「…。い、イヤだ!」

嫁「イヤだって何よ。アンタ言うたよな。プロバイダーの年会費払う時「頼む!何でも言う事きくから」って土下座したよな。」

何で私はすぐ土下座してしまうのか、自分の軽率な行動をモーレツに後悔した。

しかし、その時は土下座なりなんなりしておかなければ、今こうして更新している 自分もいない訳だから、それはそれで正解ではあったのだが…。

嫁「辞める言うたよな。」

呉「………。」

嫁「言うたよな!(重低音)

呉「いいました…。(ミュート)

しかし言葉とは裏腹に私の心は納得などいくハズもなかった。

やっと毎日見に来てくださる読者を獲得し、アクセスも順調に延び、 ”これからだ!”と言うときに死刑のような宣告。あんまりだ。

呉「ま、待ってくれ。な。延長!延長契約をしてくれ!!」

嫁「なんやねん。それは。知らんがな。そんなもん。」

嫁は冷酷な殺人マシーンへと変貌した。確かに私は嫁の言う条件を飲むかわりに、年会費を払ってもらった。

そうか。それで最近遅くまで更新していてもウルサク言わなかったんだな。

前回の掲示板の事や、メールでの励ましの文面を嫁に伝えたところで嫁の態度はまるっきり変らなかった。結局、財布を司るのは嫁なのだ。

嫁を納得させなければ、道は開けない。

納得? そうだ。ただ闇雲に土下座すればいいってもんじゃない。

納得させるのだ。感動させれば俺の話を聴いてくれるかもしれん。私は嫁に背中を向けるのを改め、嫁の方に向き直った。

呉「なぁ…。」

私の瞳はきっと冬の夜空のように澄み切っていたに違いない。なんの恐れも迷いもない自分の信念を堅く信じた私は極めて穏やかに話かけた。

嫁「な、何よ。」(狼狽)

嫁は冷静な私のペースにすっかり調子を狂わされた様子であった。「30歳で終わり!」と宣告すれば、私の米つきバッタの様子を観て後で笑うつもりであったのだろう。

甘いのだ。私のホームページに賭ける意気込みは、少々の事で揺らぐものではないのだ。

呉「俺には夢がある…。」

嫁「夢???」

呉「そうだ。大きな夢だ。聞いてくれるか?」

嫁「ま、まぁ、聞くくらいならエエけど…。」

私の真っ直ぐを見つめる視線の熱さに、嫁は押され気味のようであった。

呉「いいか。今の世の中すさんでいるじゃないか。豊かなようでちっとも豊かじゃないんだ。この国は。金も心もな。例えばだ、今の娯楽消費文化、一つの番組から、やれCDだ、やれ声優の写真集だ、設定資料集だ、豪華LD-BOXだ、売って売って売りまくり。そうして次の年には新しい番組に飛びついて、昨日まであんなに楽しませてくれた番組の事なんか振り向きもせず中古屋行きだ。

皆求めてばかりなんだよ。だから俺はホームページを通して同じ趣味や笑いを共有し情報を発信したいんだ。そうしてもっと頑張って「ホームページつくりたいなぁ」とか「ホームページやっとできた!」って人たちを応援していきたいんだ。素敵じゃないか。

己をスパークさせている人というのは。そうして互いにリンクを張り、励ましあい、本当の自分を見つける旅に旅立つのだ。そのほんの手助けになれれば…。それが俺の夢であり、大望なんだ。後に続く若い力の為に俺は続けなければならないのだ。」

一気に喋りきった私を嫁は少し驚いた顔で見つめていた。

どうやら感動している模様である。目も少し潤んでいる。

嫁「そうなの…。よくわかった。いいよ。続けても…。」

話せばわかるとはこのことである。熱意を持って話せば必ず伝わるのだ。

呉「そうか!ありがとう。わかってくれて。これでよく眠れるよ。」

嫁「でも、あんまり無理しないでね。じゃオヤスミ。」

呉「ああ、おやすみ…。」

嫁「……。」

呉「……。」

嫁「ねぇ、ところで更新って何してるの?」

呉「まぁ、いろいろだ。寝るぞ!」

嫁「ねぇねぇ、じゃあ今日は?」

呉「今日? 今日は塩屋君の写真だけ更新した。」

嫁「ふぅ〜ん。じゃあ昨日は?」

呉「昨日はウルトラマンの怪獣の顔を人間にくっつけた。」(※参照

嫁「ぶぼへっ」(爆笑)

呉「な、何がおかしい!!」

嫁「だって、ひひ、アンタの大望って、へへ」

呉「口で説明したらちゃっちいが、ネタを考えるのに毎日胃が痛む思いなんだぞ!」

嫁「くくくっ(こらえている)。で、ちなみにおとついは何?」

呉「ロボコンの4コマを一生懸命描いた。」(※参照

嫁「ぶべへっ!」(子供が起きそうなくらい大きな奇声)

呉「オマエ、うぬぬ。キレるぞ!」

嫁「だってよ?大望とか夢とか人を散々感動させといてよ。何? ロボコン? 怪獣?」

呉「…………。」(恥辱)

嫁「いや〜久しぶりに笑わせてもろたわ。よかった。よかった。」

呉「おい。何がよかったねん。」

嫁「来年の5月で…。そうや”さよならコンサート”開いたらええやん」(一人で爆笑)

呉「……。」(ぼう然)

嫁「ナイスアイデアやろ”みんなありがとうっ”って”若者よ、あとは頼むぞ”って。」
(ひたすら爆笑)

呉「…………。」

一人笑いのツボにはまってしまった嫁を、横目でみながら呆然とする私。

延々と力説したのは何だったのだ。

頑張れ呉エイジ。

君に明日はあるのか?





これを読んでいる独身者諸君。

男には、女が逆立ちしても絶対に理解できない大望がある。

と、一言いっておきたい。