「血みどろの抗争」




剣豪とうたわれた、宮本武蔵。

彼は剣の型や極意など関係のない人で「自分より強い敵とやり合うとき、いかにして勝つか?」という一点のみを考えて生きてきた人であった。

ある日、殿様の前で試合をするハメになった宮本武蔵。

相手はスゴ腕の棒術使いだ。

少し遅れて殿の御前に出向くと、相手はすっかり用意ができていて、神妙に目なんかつぶっちゃってる。

棒を見ると”八角棒”。当たるとイタそうだ。

遅れて参上した宮本武蔵は、殿に礼でもするかと思いきや、座って待っている棒術使いにイキナリ飛びかかって、アッサリと仕留めてしまった。

「試合だというのに油断している相手が悪い。」

とは武蔵の弁である。ムチャクチャではあるが、見事な戦略である。

卑怯だとか姑息だとかどうでもよい。

要するに勝てばいいのだ。

どこの世界でも勝負はある。家庭の中にだってある。

私は先に紹介した偉人達が好きであった。それは嫁との闘いの中でも形を変えて活かされている。

最近、嫁さんは敏感だ。ヒスも10%程アップしているような気がする。(当社比

嫁はマックの起動音だけでも、変な声でうなるようになってきた。

マックの起動音が「キライ」なのだそうだ。

うなるだけならいいが、音がした途端台所の床を蹴り出した時は、さすがにビビり、

呉「メール見るだけやん。メール見るだけやん。

私も嫁をなだめるのに、ものスゴク気を使った。

子供が9時頃に寝てしまった時、嫁は私と「のんびりテレビが観たい」と言うのだが、私はバラエティーを観るくらいなら、読書やHPの更新の方がしたいので、衝突してしまうのは仕方のないことだった。

なんか最近は理由もわからなくなって、私がパソコンに座る行為自体が気に入らないらしい。

どんなテを使ってでも邪魔をするのが快感になっている節がある。

呉「子供も早く寝付いたし、オマエテレビ観るんやろ?俺、更新するわな。」

嫁「……」

呉「な、何だまりこんでるんや?」

嫁「30分くらい一緒に横になってテレビ観ても、バチ当たらへんやろ?」

呉「テレビなぁ…、テレビつまらんし。」

嫁「そんなにパソコンがええんか…、私がこんな状態でも。」

呉「ええっ? どないしたんや? 具合悪いんか?」

嫁「多分、風邪ひいてるわ。熱っぽい。顔も赤いやろ? 体温計とって。」

私は言われるがままに体温計を取りに行く。

呉「ほんならワシが計ったるさかい、ジッとしとけ。」

計り終えるまで約5分。

ピピピピッ ピピピピッ

呉「どれどれ。」

体温計を見ると”36度7分”であった。心配するほどのもんではない。

呉「あ〜。たいしたことない。6度7分や。健康健康。」

嫁「そんな事ない。私ムチャクチャ体ダルいもん。」

呉「何言うてるねん。微熱もあれへんわ。」

嫁「私、確か平熱が32度ぐらいやったと…

呉「オマエ死んどるやんけ!

嫁「その体温計絶対おかしいわ。ちゃんとワキ挟めてなかったんやわ。」

呉「電子体温計やぞ!

嫁「そうか…。よーわかった。アンタはそういう人や。」

呉「び、病気とちゃうやんけ。オマエ。」

嫁「私が苦しんでいる時にでも平気でパソコンに行くんや…。」

呉「だから微熱もあれへんって…」

嫁は勢いよくスックと立ち上がった。仁王立ちである。何故かモノスゴクでかく見える。

嫁「こんな冷酷な人知らんわ。今から実家帰る!!

呉「ち、ちょっと待て、オマエ調子悪いんと違うんか?」

嫁「”健康”と診断したのはアンタやろ!

呉「オマエの会話、なんかおかしくないか?!

嫁「そうです。どうせ私は国語ダメです。アンタと違って小説読みません。”別マ”しか見ません。」

呉「イヤイヤ。そういう事やなしに。なんか妙に論点がズレてるような…」

嫁「すべてマックが悪いんや。

呉「なんでそこに着地するねん。全然脈絡があれへん。」

嫁「あれさえなかったら、我が家は円満に行くんや。」

呉「そうと違うやろ? 俺もモデムケーブルとられても文句言わへんやろ?」

嫁「…」

呉「なっ、妥協しとるやないか。なっ。」

嫁「アンタ、私にも妥協してると思うてるやろ

呉「な、なんでやねん。全然そんなこと思うてない。被害妄想やって。」

嫁「本心でそう思うてくれるんなら、頭痛くなってきたから一緒にテレビ観て。」

嫁の知略を尽くした?戦略に、あえなく陥落した私は「実家帰られるよりマシか」と思いつつ、不本意ながらテレビを観るのであった。

そういう自分を振り返った時、いくら「歴史上の偉人が好き」とイキがってみても、自分の到達できうるレベルは、剣豪宮本武蔵が年老いた江戸時代。”島原の乱”に参戦し、勢い良く石垣を駆け登ったまではよかったが、腰を抜かしてしまって仲間に助けてもらった情けない図と

今の自分がダブって見えて仕方がないのである。





これを読んでいる独身者諸君。

女房に論理は通用しない

と、一言いっておきたい。